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おすすめ書籍第二十五回

おすすめ書籍第二十五回

  • 2022年9月5日
  • 本の紹介者: 鈴木崇之(横浜国立大学)

書籍情報

  • 書籍        水理模型実験の理論と応用 ―波動と地盤の相互作用―
  • 作者        土木学会海岸工学委員会 水理模型実験における地盤材料の取扱方法に関する研究小委員会
  • 出版社       土木学会,177頁
  • 出版年       2021年
  • 図書番号      978-4-8106-1037-6

https://www.jsce.or.jp/publication/detail/detail.asp?id=3278

紹介記事

 これまで海岸工学分野において,現象メカニズムの解明等に向けて多くの現地調査や水理実験が実施されてきました.その中でも水理実験は物理現象を簡単化し,比較的手軽に検討ができる手法として,研究のみならず,学生への講義にも使用されています.水理模型を用いての実験は現象解明に向けて有効な手法であるものの,実スケールでの実験ができないことから,例えば底質と波浪場の関係と言った相似則の問題が生じます.これまで海岸工学に関する多くの教科書,参考書が出版されていますが,水理模型実験に関する内容に特化したテキストはほとんどなかったのではないかと思います.

 土木学会海岸工学委員会では,2016年6月に水理模型実験における地盤材料の取扱方法に関する研究小委員会を立ち上げ,これら問題について一定の方向性を示すことを目的として議論が行われてきました.今回は,本委員会の成果を取りまとめた「水理模型実験の理論と応用―波動と地盤の相互作用―」を紹介したいと思います.本書籍は,2021年9月に土木学会より出版され,6章にて構成されています.

 第1章では地盤工学的アプローチと水理学的アプローチの違いについて示すと共に,本書籍の目的を示し,第2章では「模型実験の方法論」とし,水理学および地盤工学分野での模型実験手法について整理し,実施の実例も含めてまとめられています.第3章では「模型実験における相似則の考え方」として,両分野で用いる相似則についての説明がなされています.相似則のこれまでの歴史についてのみならず,それぞれの分野にて着目する現象を対象として相似則を説明すると共に流体と地盤の複合問題への適用の際の課題についても整理しています.続く第4章では「模型実験のケーススタディ」として,捨石や消波ブロックで構成される透水性構造物下部の洗堀ならびに堤体の沈下,盛土状の養浜砂侵食による浜崖の形成を例にして説明がなされています.第5章では「波浪・地盤数値計算の方法論」として最先端の数値計算の情報を紹介し,最後の第6章では「今後の課題」として未解決な点等について示すと共に,今後の展望についても示されています.

 本書籍は現在英訳も行われており,近いうちに出版される運びとなっております.日本の大学に在籍している留学生や研究機関に所属されている外国人研究者のみならず,海外の研究者,学生らにも是非ご覧頂き,今後の研究の取り組みの参考にして頂きたいと思います.