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おすすめ書籍第一回
書籍情報
- 第１回 ２０１３年１１月１３日
- 書名 ハワイの波は南極から
- 著者 永田 豊
- 出版年 1990
- 出版社 丸善，p.152.
- 本の紹介者：北野利一（名古屋工業大学）
http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/book_data/search/4621034723.html
紹介記事
記念すべき初回に何をとりあげるか，正直，大いに悩んだ．アレコレと悩んだ本は，また後日に紹介したいと考えている．
大学教員の任務の１つに，高校出張授業がある．実は，その時の話題のタネに，この本をしばしば使わせて頂いている．なぜなら，著者の永田先生は大阪人で，各章のタイトルからしてノリがいいのである．私も大阪人であるが，そのノリに圧倒される．目次から幾つか，波の個性が気になるタイトルを抜出してみる（だって，丸善の HP には目次すら掲載されていないのだから）．
３．海の波に恋のメッセージはたくせない ６．波は忍者 － 消えた半数の波 13．波，その華麗なる一族 24．波も悩む？ － 額にしわを寄せる波 などなど
このうち，私が最も利用させてもらっているのは「波は忍者」．深海波の群速度が，位相速度の半分であることから，海面の固定点を波が１００波通過した時，波群を鳥瞰すると５０波しか見当たらない不思議を忍者のようなインディアンの騎兵隊に例える話は，まちがいなく初対面の高校生に受ける．波形のアニメでやる場合は，空間波形の伝播にまず目がいくので，話は逆になる．つまり，空間波形の波の数の倍が，１点の時間波形として通過していくことで，彼らを驚かせることになる．
著者曰く，身近な水の波という現象が，常識を越えるようなふるまいをする「けったいな奴」であることだけでも理解いただければ満足である．水波の研究をしている人は，そのあたりに取り憑かれている人も多いのではなかろうか？
ところで，人工リーフは，兵庫県南あわじ市の慶野松原海岸に設置（1983-84年）されたことに始まる．人工リーフが積極的に設置されるに伴って，アクセスしやすい海岸で，来襲波がダイナミックな変形をするようになったためか，サーフィンがレジャーの１つとして注目されはじめた頃の一般向け啓蒙書であろうと冷静に分析してみたくもなる．
著者のノリが良いのは，各章の終わり方である．ちょっとした教訓もどき？のオチがついていることである．
「サーファーはこのように３つの力を手玉にとって，そのバランスの上で人生を楽しんでいるようです．サーフィンを楽しむ人には若くてかっこうのいい人が多いようですが，決して複数の女（あるいは男）を手玉にとってはいけません，よくおわかりのように，バランスをとるのはなかなか難しいもので，．．． この世の中でサーフィンを楽しむのは，誰にでも好かれるあの頭の良いイルカと，われわれ人間だけだということを忘れないでください」
としめくくられると，冗談のような教訓に，なんだか切なさも漂う．
最後に再び，目次に戻ろう．
14．波のギネス・ブック － 世界記録保持者達
1933年の波高37m強の世界記録の妙が語られている．なぜなら，これは洋上のタンカーが計測したことが重要なのだ．
日本の記録は，台風が１０個も上陸した 2004 年の高知沖の記録だと記憶する．
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/11/111022_.html
有義波高として 13.55 m を記録し，ナウファス観測史上最高であると記載されている．ただし，本書の「１．波の高さってなんだろう」を読むとおり，「有義波というのは最大の波ではない」ことに注意しないといけない．室戸岬沖13kmに設置されたＧＰＳ津波計では，Hmax＝26.15mを記録したとの記載にも注目する．なぜなら，有義波高 H_{1/3} を1/3最大波高とよび，Hmaxは，旧運輸省では最高波高と呼んでいるのに対して，上記の WEB ページでは，最大波高Hmax と記されている点がやや気になるからだ（もちろん下記の報告書では最高波と記載されている）．
２００４年台風による高波の観測結果（ＮＯＷＰＨＡＳ ２００４特別号）
周辺情報
ところで，今年のあたま（2013年2月）から，coastal_list の ML では，100 ft（30m）級の波に乗って世界記録更新という話題が，少しづつ資料が追加されて幾度となく駆け巡っている．参考までに WEB ページ（抜粋）をペーストしておく．