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論文番号 151 著者名 織田幸伸,東江隆夫,灘岡和夫 論文題目 運動量を考慮した越波伝達波の算定法 討論者  横木 裕宗(茨城大学) 質疑  周期的に突入するケースでも,計算結果と実験結果の一致度は良好なのでしょうか. 回答  一致度は良好です.図−8,9が規則波が越波した時の伝達波の時系列とスペクト ルです.実験では規則波を造波していても,越波現象が多少ランダムなため,計測結 果は規則的になっていません.計算では,実際の実験における入射波の時系列を用い ているために,計算結果も規則的にはなっていません.両者を比較すると波高,スペ クトルともに良好な一致を示しています.ただし,いろいろな周期成分の波が重なっ ており,観測位置によって時系列波形が異なります.このため観測位置の若干のずれ によって時系列としては実験と計算が一致していないように見えます.
論文番号 152 著者名 仲座・津嘉山・川中・玉城・大城 論文題目 潜堤背後の水位上昇量と海浜流の制御に関する研究 討論者  灘岡和夫(東京工業大学 情報環境学専攻) 質疑  図―4の形でパイプを海底上に置いただけでは、元々(砕波帯内外の水位差によっ て)UNDERTOWが生じている部分にパイプを置くだけなので、それによって戻り流れが 増大し、水位上昇が大幅に低下するということは期待できないのではないのでしょうか? (実験との比較では、パイプをふさいだケースと比較しているようですが、パイプ敷 設の効果を論じるには、パイプを置かないケースと比較する必要があります) 回答  普通の意味での戻り流れは、パイプを置いたときでもその上部(自由水域と呼ぶこ とにする)でいくらか生じているものと思われます。穴を空けたパイプをリーフ上に 設置した場合と、パイプを敷設しない場合との自由水域での流れの様子の決定的な違 いは、パイプを敷設した場合平均流が存在するのに対し、敷設しない場合は平均流が ゼロとなるというところです。  平均流がゼロとなる自然の状態では、沖側から輸送される運動量は平均水位が作る 圧力勾配とバランスします。パイプを敷設した場合は、波が感じる水域は極端な言い 方をするとパイプ上部の自由水域のみとなります(波動域と流れ域とを完全に分断し ていることが重要)。そのため、沖側から輸送される運動量はリーフ上で平均流の運 動量に変換されます。その後、例えば流れは跳水を得て平均水位の上昇量に変換され るはずです。ですが、そこはパイプ側に引き込むことで押さえています。  以上が還流による水位上昇量を押さえる原理の説明となります。  しかし、水位上昇量のみの比較という意味では先生がご指摘のような比較実験があ るべきだと思います。ご指摘ありがとうございました。
論文番号 153 著者名 安田孝志・陸田秀実・大屋敦嗣・多田彰秀・福本 正 論文題目 トラップ式ダブルリーフの消波機能およびセットアップの抑制効果について 討論者  角野昇八(大阪市立大学) 質疑  KR=0.2,KT=0.2 もの大規模なエネルギー損失が期待できる構造物条件を教えてほ しい. 回答  図-7よりわかるように,波高天端水深比 H1/d が1.5以上程度であれば,入射波の 周期に関係なく KT=0.2 程度まで波高は低下する.また,今回の実験におけるトラッ プ式ダブルリーフの条件は,R1/h1=0.80 , R2/h1=0.4,X1/h1=3.64,X2/h1=1.52 で あり,スリット長は LS/h1=2.5〜3.0 である.なお,このリーフ条件下において,砕 波時の放出ジェットは約8〜9割程度スリット部内で捕捉され大規模なエネルギー損 失が行われると同時に,トラップ部岸側端部における岸向きの水平流速は大幅に低減 する.したがって,トラップ部は岸向きの運動量および質量輸送を抑え,セットアッ プ抑制や波高減衰を促す機能を有している.  但し,これらは本研究で行った実験結果に基づくものであり,そのまま現地海岸へ 適用し構造物条件を決定するのは現段階では困難であるため,さらに詳細な実験を行 う必要がある.
論文番号 154 著者名 吉田明徳 三宅 司 入江 功 和田 信 論文題目 杭・ヒンジ固定式防波堤による波の制御 討論者  角野昇八(大阪市大,土木) 質疑  横軸に水平板の緒元を入れて結果を整理すれば,W/h=1.0 および W/h=2.86 のデー タが連続して表示されるのではないか? 回答  「浮体間隔Wと入射波の波長Lの比W/Lを横軸に取って表示すればどうか」と言う質 疑かと考えますが,同じ情報を与えることに変わりはありません.w/h=1.0のデータ がW/h=2.86に対してW/Lの小さな所に圧縮されたような表示になりますが,W/h=1.0 および W/h=2.86 のデータがW/Lに関して連続して表示されることにはなりません. ただ,波数をパラメーターにした著者らの表示は,入射波の波長と浮体長の比をイメ ージするには換算が必要で,御指摘のとおりW/Lを横軸に取った方が良いかと思いま すが,図-3,4,5は,実験値による理論解の検証が主たる目的ですので,波数を横軸に 取って表示しています.
論文番号 156 著者名 陸田秀実・Azarmsa Seyed Ali・安田孝志 論文題目 砕波によるジェットの振る舞いと衝撃砕波圧の関係 討論者  下迫健一郎(運輸省港湾技術研究所) 質疑  鉛直壁の高さを無限として計算を行っているが,実際の構造物は天端高は限られて おり,波の一部は越波するため,本モデルは適用できない.  有限高さの鉛直面での計算は可能か? 回答  指摘されるとおり,本計算はポテンシャル理論に基づく境界積分法(BIM)を使用し ているので,越波問題や砕波後の水塊の飛散問題などには原理的に適用不可能である .また,本計算に用いた境界積分法は,計算領域が閉領域であることが必要十分条件 であるため,有限高さの鉛直面を境界条件とした数値解を得ることは出来ない.  本研究では,砕波時の放出ジェットが鉛直壁に衝突する直前までの波形変化,各ジ ェット諸量と実験による衝撃砕波圧の関係を詳細に議論したものであり,ここまでの 範囲内(ポテンシャル理論)であれば十分な結果であると考えている.但し,波の衝 突後の議論は一切不可能なので,全く別の数値計算手法を開発中である.
論文番号 157 著者名 木村晃,多田二三男,松見吉晴 論文題目 大きな水深に設置された構造物に作用する砕波衝撃圧について 討論者  勝井秀博(大成建設) 質疑  (1).センサーの固有振動数fn〜23Hzというが,その程度では衝撃波力の真のピーク は捉えられない(追従できない).したがって,理論計算値が大きく出るのは当然と 考える.  (2).それにしても最後の図の実験値の波形は気になる.第一に理論波形のピークよ り,ピークの位相はずれるのは当然だが,23Hzのfnで20ms付近でピークが生じるのは なぜか(早すぎないか)?第二にモデルは単柱なのに実験は柱列である.両者の直接 比較は無理ではないか. 回答  (1).ご質問は”衝撃波圧は非常に周期の短い(周波数の大きな)現象であるから, ここで用いているような低い(23Hz)固有振動数の測定装置では計れない”のではな いか?と理解いたしました.測定系は線形1自由度系の特性を持っています.測定系 が線形1自由度系である限り,変位と位相の周波数特性がわかっておりますので,出 力信号(ゲージ信号)から入力信号(波力)を計算する事が可能です.高周波の信号 が消えてしまうことはありません.ただ問題となりますのはゲージ,アンプのS/N比 です.高周波成分の振幅に比してノイズレベルが無視できない場合,波力を計算する 過程でノイズまで増幅するので誤差も大きくなります.図−6にはノイズの影響が含 まれている(残念ながら)と考えております.  (2).ご質問の前半は(1)のご質問と関連するように思います.ここではFFT法で振 幅位相を計算しましたが,同じ衝撃波圧波形が繰り返し現れると考えて計算を行いま した.応答の遅れは入出力信号の位相のずれとして処理しました.後半のご質問は, 単円柱に対するモデルを多円柱に使うことの是非に関するものと思います.波が柱体 に当たりますと水塊は柱体表面に沿ってうち上がってゆきます.高速ビデオを用いた 解析では,表面に沿う打ち上げが始まる前に波圧のピークが現れます(波圧の低下が 始まります).したがってピーク付近の波圧の推定には単円柱のモデルでも可能と考 えました.
論文番号 159 著者名 前島正彦,伊藤政博,久保田稔 論文題目 海底面近くにあって波動を受ける水平円柱に作用する流体力 討論者  斎藤武久 (金沢大学工学部) 質疑  海底面の境界条件を流れ関数一定として解析されておりますが,この条件は流況場 に厳しい拘束を課すことになりませんでしょうか.ポテンシャル理論なので,海底面 上ではスリップすることが許されますけれども,流れ関数を一定とすると底面におい てすべて速度が一定となります.normal方向の速度をゼロとする境界条件は課せない のでしょうか. 回答  ある面上で流れ関数が一定であれば,その面の法線方向の速度はゼロになるので, 両者は本質的に同じ境界条件だと思われます.しかし,この問題では,境界を持つ物 体が,円柱と水路床と2つありますので,2つの境界の流れ関数の値をそれぞれ指定 する必要があります. また通常の単一湧き出しを用いず,二重湧き出しを用いたのは,無限領域を取り扱 うために,二重湧き出しでは速度か湧き出しからの距離の逆数の2乗に比例して減少 するため,速度が距離の逆数に比例して減少する単一湧き出しより有利と考えたから です.
論文番号 161 著者名 久保田真一・小野正順・出口一郎・松本 忠 論文題目 板部材で構成された底設構造物に作用する流体力に関する研究 討論者  斎藤武久(金沢大学・工学部) 質疑  板構造物まわりの流況に関するK.C.数の代表長さの取り方とその理由について 回答  構造物まわりの流れを特徴づける無次元パラメータは,Reynolds数とStrouhal数が あり,Strouhal数は特に流れの非定常性の影響を表すパラメータと考えられています .Strouhal数は,Keulegan-Carpenter数(K.C.数)の逆数になります.従って,K.C.数 の時間スケールには渦のはきだし周期がとられ,長さスケールには渦列の間隔あるい は剥離点の間隔が通常とられます.本研究で取り扱っている海底面上に立てられた鉛 直板は,海底面が鏡像の境界条件となるため,無限流体中に2倍の長さの板に流れが 鉛直に作用する場合と同じ状況になります(実現象では,板背後でカルマン渦が発生 すると流れ場は上下非対称になるため状況は異なります)この時,剥離点の間隔(渦 列の間隔も同程度と考えられる)は,上下の板の端部であることは明確であり,代表 長さは板の長さの2倍の値となります.従って,本研究においてもK.C.数の代表長さ は,板の長さをとりました.  一方板の厚さは,定常流の場合ほとんど流れ場には影響を与えないと考えられます .しかしながら,振動流場の場合は海岸工学の教科書でも良く記述されているように ,半周期間で構造物の背後に水粒子が回り込めるかどうかが構造物背後での剥離渦の 形成に大きく影響しているので,水粒子の半周期間の移動距離と構造物の流れ方向の 距離の比をとったK.C.数も重要なパラメータとなります.本研究では水粒子の移動距 離に対して十分薄い平板を研究対象としているため,K.C.数の代表長さに板の厚さを とることはあまり意味を持ちません.その理由は,特に平板はその背後に死水領域を 形成するため,半周期間で構造物の背後に水粒子が回り込めるかどうかは死水領域を 含めて考慮する必要があるためです.
論文番号 162 著者名 石田啓,斎藤武久,鞍田一剛,清水康輔 論文題目 側方からの剥離を伴う平板に作用する波力に関する研究 討論者  東江(大成建設 技研) 質疑  鉛直方向の渦を評価する為に渦の放出個数を変化させている.放出する循環の大き さは,水平流速の絶対値に変化する為,それで十分では無いか. 回答  確かに,水平2次元に限定した場合,循環の大きさは,水平水粒子速度の絶対値に 比例します.ただし,厳密には,循環の大きさは水平水粒子速度と水平方向の微小距 離との積に比例し,循環の発生率が水平水粒子速度の2乗に比例することになります .このことを援用して,本研究では後流渦を渦法で近似する場合,放出循環を速度の 2乗と微小時間間隔との積として算定し,この微小時間間隔を渦点の放出時間間隔と して解析を行なっています.この渦点の放出時間間隔にはさまざまな評価法がありま す.一様流場の場合,柱体代表長に比例し主流速度に反比例する形で与え,試行計算 の結果,比例定数を定めるのが一般的です.本研究では,各水平断面における渦点の 放出時間間隔を,上述の比例定数を鉛直方向に一定とし,それぞれの水平断面で変化 する入射波の最大水粒子速度に反比例する形で与え,放出渦個数は鉛直方向へ変化す ることとしました.確かに,鉛直方向へ比例定数を変化させ,渦の放出時間間隔を等 しくする手法も,検討のしなければなりませんが,今回は,ある水平断面で試行計算 の結果妥当と思われる比例定数を鉛直方向へ一様に用いる立場をとりました.
論文番号 163 著者名 林建二郎、田中克也、藤間功司、重村利幸 論文題目 振動流中で渦励振動している円柱と流れとの相互作用による作用波力の変化 討論者  カナピラン・シルベンカタサミ(鹿児島大学大学院博士後期課程) 質疑  (1)Detailing CS、CC and CLT (揚力係数 CS、CC とCLTについて詳しい説明をお願 いします)  (2)Are there any existence of theoretical validation?  (3)How about application of experimental measurement? 回答  (1)渦励振動時の円柱に作用する波力の大きさは、円柱からの後流渦と円柱の振動と の相互作用により円柱が静止している場合と異なる。従って、渦励振動量の評価を精 度良く行うには、渦励振動時の波力特性を正確に把握する必要がある。本研究では、 渦励振動している円柱に作用する揚力DFyaの特性を調べるための一手法として,円柱 の振動変位yと揚力DFyaのフ−リェ解析を行い,DFyaのa)振動変位との同位相成分DFy s,b)振動速度との同位相成分DFyc,ならびにc)振動流周波数fdの2倍なる周波数成分 (=DFyaの第2次周波数成分)Fya(2)を求め,本文中に示す下記の揚力係数をそれぞれ 算定した。 CS =DFys/(1/2・ρ・D・Um2)            ---(19) CC =DFyc/(1/2・ρ・D・Um2)             ---(20) CLT=Fya(2)/(1/2・ρ・D・Um2)=(CS2 + CC2 )1/2     ---(21)  DFysは渦励振動時の円柱の水中付加質量力に寄与する揚力Fya(2)の成分である。DF ycは振動を引き起こす外力(振動強制外力)に寄与する揚力Fya(2)の成分である。  (2)一方向流中で渦励振動している円柱の上記CSやCCに対しては、a)円柱後流渦の強 さや発生する位相を考慮した物理モデル式、b)線形な強制振動方程式とVan-del-Pol 型の自励振動方程式を組み合わせたWake-Oscillatorモデル式、ならびにc)流れの数 値計算等による解析が試みられている。しかし、これら算定値は実験値を十分に評価 できるものではない。波動場や振動流場における上記CSやCCに対する解析はまだ十分 に行われていない。  (3)本実験で得られた成果は、石油掘削用ライザ−管や水中トンネルのような柱状な 弾性海洋構造物の波浪に対する渦励振動問題の検討に利用できる。KC数が比較的に小 さな場合が多い大型の海洋構造物の場合でも、KC数が5以上になると渦励振動による 揚力方向の振動が問題となってくる。静止時の円柱構造物に作用する揚力の大きさは 、KC=5付近では非常に小さい(例えば揚力係数CLT=0.05)。しかし、その円柱が渦励 振動状態になると、円柱後流渦と円柱の振動との相互作用により振動強制外力は円柱 静止時より大きく増幅(例えばCC=1.3)されるため、大きな渦励振動が生じる。本模 型実験におけるRe数は103のオ−ダであり、実海洋構造物のような大きなRe数(Re>10 6 ) での円柱の渦励振動特性を調べることが今後の課題となる。
論文番号 164 著者名 石田 啓,由比政年,平川真史 論文題目 高レイノルズ数領域における円柱周辺振動流場の数値解析 討論者  細山田得三 (長岡技科大) 質疑  流速ベクトルは,直交デカルト座標のままであるが,曲線座標に沿った反変ベクト ルにする必要はありませんか. 回答  解析結果と実験結果の一致は非常に良好であり,また,機械・造船等の他分野にお ける同様の解析例をみても,直交デカルト座標での流速ベクトルを用いた解析で十分 な精度が得られていることから,必ずしも反変ベクトルを用いる必要はないと考えて います. 討論者  池谷 毅(鹿島技研) 質疑  この方法を実務に使用していく場合,いかなる点が今後の課題となると考えられま すか. 回答  高レイノルズ数領域の流体場の多くは,本質的に3次元構造を有しており,流体場 の3次元的な構造を捉えられるよう,計算スキームを3次元へと拡張していく必要が あると考えています.また,より一般的で複雑な形状や配置を持つ構造物周辺の流れ 場を効率良く解析するための格子生成の技術を向上させることも重要と考えています.
論文番号 165 著者名 長澤大次郎、宮坂政司、和田洋二郎、池上国広 論文題目 非線形減衰力を考慮したケーソン型構造物の動揺推定技術の開発 討論者  新井信一(足利工業大学) 質疑  不規則波中の運動計算を実施するにおいて、非線形減衰力をどのように取り扱った 教えてください。 回答  不規則波中の運動計算(推定)は、規則波中の計算結果(周波数応答関数)を不規 則波のスペクトルを用いて線形重ね合わせを行うことにより求めています。従って、 非線形減衰力は規則波中の運動計算を行う際に考慮しています。  詳しいことは、元良誠三著「船体と海洋構造物の運動学」(成山堂書店)が参考に なると思います。また、問い合わせは下記までお願いいたします。  三菱重工業株式会社横浜製作所 鉄構技術部 橋梁設計課 長澤  e-mail : Daijiro_Nagasawa @ d . ydmw . mhi . co . jp
論文番号 166 著者名 下迫健一郎・高橋重雄・斉藤祐一・M.Muttray, H.Oumeraci, 細川泰廣 論文題目 高基混成堤の水理特性および耐波安定性に関する大型模型実験 討論者  細山田得三(長岡技術科学大学) 質疑  (1) 本構造物はどのような用途を想定して開発されましたか。  (2) 耐波設計法は,直立消波ケーソンに類似したものになるのでしょうか。 回答  (1) 内湾域で比較的水深が浅く,設計潮位の大きいところにおいて,防波堤あるい は防波護岸として用いることを想定しています。  (2) 基本的には直立消波ケーソンと同じように,部材強度と直立部全体の安定性に ついて検討する必要があります。ただし,高基混成堤の場合は,直立部に作用するの はほとんど砕波後の波であり,波力があまり大きくなりません。したがって,直立消 波ケーソンの波力算定式をそのまま適用するのでなく,高基混成堤独自の算定法を考える必要があります。
論文番号 167 著者名 下迫健一郎・高橋重雄 論文題目 モンテカルロ法を用いた混成防波堤の期待滑動量の計算 討論者  藤原隆一(東洋建設? 鳴尾研究所) 質疑  本論文の滑動に対する検討方法は,捨石マウンドを剛体として検討されていますが ,水理模型実験(現地も含めて)では,滑動時にマウンドが崩壊するなど,剛体とし てとらえるのは難しい面もあると思います。この問題に対して何らかの考えをお持ち でしたらお教えください。(例えばモデルの中に取り込んでいく) 回答  ご指摘のとおり,ある程度滑動が進むとマウンドの崩壊についても考慮する必要が でてくると思います。この点については,今後検討していきたいと考えております。 なお,ケーソンがマウンド内にめり込むように滑動し,動きが止まってしまう場合も 考えられますが,これについては,たとえば滑動後の摩擦係数を変化させるなどの方 法によりある程度考慮できるのではないかと考えております。
論文番号 168 著者名 興野俊也,貝沼憲男,高橋由多加,青野利夫,藤原隆一 論文題目 現地観測に基づく低天端ケーソン堤の安定性評価 討論者  谷本勝利(埼玉大学) 質疑  低天端による波力低減を考慮すると堤幅が地震時安定で決まるということですが, 地震時の何がクリティカルになりますか.もし地震時安定を無視して波力で堤幅を決 めるとすると何mとなりますか. 回答  東護岸は,沖合の東防波堤より先行して施工することから,東防波堤の遮蔽される 期間までは防波堤の機能(防波堤状態)が,また,埋め立て完了後は護岸としての機 能(護岸状態)が求められる.このため,設計は防波堤状態と護岸状態の安定性の照 査を行う必要があった.  仮に,波力が80%に低減しているとして設計すると,東護岸の堤体幅は,護岸状 態での地震時安定性で決定され,その時の堤体幅は15.5mとなる.堤体幅の決定 要因は,基礎支持力(ビショップ法)であり,このときの滑動安全率の余裕もごくわ ずかである.  護岸状態の安定性を無視し,仮に,波力が80%に低減しているとして防波堤状態 での断面を決定すると,堤体幅は15.0mとなり,その時の決定要因は端し圧になる.
論文番号 170 著者名 小竹康夫,興野俊也,貝沼憲男,藤原隆一,石崎崇志 論文題目 一重・二重スリットケーソン堤の波力特性の相違について 訂正  論文集においては,スリットケーソン堤に作用する波力を推定するにあたり,直立 部に作用する波力のみを対象とした.そのため,遊水室嵩上げ部を高いマウンドと仮 定することにより衝撃波力を直立部に作用させる方法を提案した.その後の検討の結 果,スリット部や遊水室嵩上げ部を含むスリットケーソン堤全体に作用する波力を対 象とすることにより,現行の合田波圧式を基礎とする波力の推定値に対して,8〜9 割の波力低減が得られていることが分かった. 討論者  小笹博昭(運輸省 港湾技術研究所) 質疑  一重スリットと比べて,二重スリットのメリットは何と考えたのか 回答  スリット壁を2枚にすることにより,直立壁に作用する波浪がエネルギー逸散を生 じる機会を多くし,全体的に堤体に作用する波力が小さくなくことを想定して,実験 を行った.  実験開始にあたって,遊水室幅を一定に保ったまま,スリット壁の枚数のみを変化 させる方法と,同一形状の遊水室を1室もしくは2室配置して,スリットの枚数を変 える方法が検討され,今回は後者の方法を用いた.  今回対象とした一重スリットと二重スリットでは,断面形状と作用させた波浪条件 の関係で,二重スリットの場合に衝撃的な波力が直立壁に作用する場合が見られ,予 想に反する結果となった.  また,スリットケーソン堤全体に作用する波力として捉えた場合,一重スリット, 二重スリットともに現行の合田波圧式を用いて計算される設計値より8〜9割の波力 低減が得られることが分かった. 質疑  スリット堤部のマウンド効果が衝撃波力をもたらしていると考えるが,衝撃波力を 避けるためにスリット部の幅に限りがあるのではないか 回答  遊水室嵩上げ部の高さ,幅共に限界があると考えられる.  今回それらのパラメタは,反射率を最小にするように与えたものであるが,二重ス リットの場合の実験結果で直立壁静水面近傍で衝撃的な波圧の作用状況が見られるこ とからも,衝撃波力が作用する可能性のあることは確認できる.  従って,スリットケーソン堤の設計に際して,各パラメタ値は機能の一面のみから 決定できるものではないという観点から,水理模型実験等により詳細な検討を行う必 要があることが改めて確認できた.
論文番号 173 著者名 高山知司・吉岡 洋・山元淳史・西田 善道・鳥井正志 論文題目 多点ブイ係留時の大型タンカーの動揺と係留力の周波数特性 討論者  巻幡敏秋 (日立造船(株)鉄鋼事業本部) 質疑  (1)現地風のスペクトル形について,通常海洋構造物で採用されているダベンポ ート,または日野スペクトルとの対応はどうであったか教えて頂きたい 回答  (1)この件に関しては,別紙(鳥井ら1997)のp.868および図ー5で説明してある .要するに,海面摩擦係数を0.003とすることにより,ダベンポートスペクトルは実 測のスペクトルとピーク周波数およびピークの高さが良く一致していたが,実測の方 ではより長周期の成分が含まれていた.これは現地が山に囲まれた湾で風が陸から吹 き出していたために,山の地形の影響があると思われる.しかしこの長周期成分は非 常に周期が長く,係留船舶の動揺に対する影響はほとんどなかった. 参考文献 鳥井正志・高山知司・吉岡洋・関田欣治・山元淳史・原正典(1997): 多点ブイ係留 された大型タンカーの現地観測に基づく数値モデルの検証,海岸工学論文集,第44巻.
論文番号 174 著者名 鳥井正志,高山知司,吉岡洋,関田欣治,山元淳史,原正典 論文題目 多点ブイ係留された大型タンカーの現地観測に基づく数値モデルの検証 討論者  小林昭男(大成建設 技術研究所) 質疑  図4について、係留の非線型性を考えると長周期応答と短周期応答を別々に足すこ とは理論的に正しくないと思うがいかがか? 回答  以前に行った水槽実験結果から、Sway,Yawの固有周期(実物スケールで約200〜40 0秒)の長周期応答に、波浪による短周期応答(5〜10秒)がわずかにひげのように重 なった応答特性を示すことがわかっている。そして、流体力として周波数を考慮する 方法(例えばメモリー関数)を適用しなくても実用的な解析法として、短周期モデル と長周期モデルに分けて時刻歴解析し、両者を重ね合わせることでも十分実験値を再 現できた。いわばメモリー関数の周波数範囲があるカット周波数(fc)で区切られる 2領域のみにそれぞれ付加質量係数、減衰係数などの流体力係数を与えたことになる。 以上のことを考慮して本論文では以下の方法を用いた。  ?流体力係数については、長周期モデルでは長周期の固有周期に相当するものを、 また、短周期モデルでは、ほぼ波の周期で動揺するので有義波周期相当のものを用いた。  ?2領域の分割を行うカット周波数の決め方であるが、このようなケースでは波浪 の周期の長い成分、例えば0.1Hzとし、変動風荷重や変動漂流力の成分のうち0.1Hz以 上の短周期成分はカットし、短周期モデルにおける波浪強制力に加え解析した。  ?重ね合せ法で十分長い時間シミュレーションを行いその平均,標準偏差値から台 風継続時間に相当する更に長い時間に発生する極大値を統計的に推定し、最大値とし 設計で用いた。  結論として、ここで提案する手法は簡易的なものであるが、メモリー関数法の単純 化したものと考えていただいてよいと思う。  実際、模型実験との比較では精度よく推定できたことを付け加えたい。
論文番号 175 著者名 巻幡敏秋,安成陽彦,与口正敏,三宅成司郎,金子慎一 論文題目 実海域における係留浮体構造物の動揺特性に関する実証観測 討論者  小林昭男(大成建設株式会社 技術本部 技術研究所 構造研究部 土木構 造研究室) 質疑  実測外力入力と計算値入力の計算結果について、風も波も実測のスペクトルの方が パワー値が大きいのに計算結果は計算値入力の方が大きいのはなぜか。 回答  図−10の設計入力対応計算値と観測値の比較図で例えばN系の結果が計算値の方 が大きくなっているのは、風速の高度分布に原因があるものと考えます。  図−5から貯蔵船上の風速は1/7乗則から得られる風速より小さくなっているの がわかると思います。設計入力対応計算では、海上10m地点で得られた風速を1/ 7乗則を適用して貯蔵船上の値を設定するため、観測結果より大きな風速が入力され ております。この影響で計算値は、観測値を上回っているものと思われます。
論文番号 176 著者名 丸山他 論文題目 ハイブリッドシミュレーション・・・ 討論者  金 憲泰(韓国釜慶大学校 海洋工学部) 質疑  879p.の表ー5において,sway モードの振幅の差(比較)は小さいですが,これに 比べて防舷材の反力では大きな差が見られますが,その理由は何ですか? 回答  防舷材の反力について,数値シミュレーションとハイブリッドシミュレーションを 比較すると,平均値・振幅の有義値には大きな差はみられない.差がみられるのは振 幅の最大値である.その原因は,roll における両者の差である.これらの差は,ハ イブリッドシミュレーターの性能等に起因していると思われる.
論文番号 179 著者名 中本隆,吉村藤謙,高橋宏直,平石哲也 論文題目 一点係留システムの安全性評価のための新しいグラフィックス表示システム 討論者  大林組技術研究所 津久井啓介 質疑  使用ハ−ドウエアはSGIのEWSとのことですが,グラフィックスの使用ソフト ウエアはどのようなどのようなものでしょうか. 回答 ソフトウエアは,当所で開発したもので,船舶や岸壁の絵は職員が手作業で作成して います.もし,御興味がありましたら,いつでも見学にきて下さい.無給で働いてい ただけるのでしたら,いつでも客員研究員として歓迎いたします.
論文番号 181 著者名 前野賀彦,石川元康,阪東浩造,秋山義信,矢部興一 論文題目 砕波帯における砂層の流動化と砂移動に関する検討 討論者  中野 晋(徳島大学・工学部) 質疑  有効土圧変動から海底地形変動を求めており,これによると一潮汐間で1mもの地 形変化があると述べられているが実際その程度の地形変化が生じていると理解して良 いのか. 回答  地盤内応力に基づく地形変動については前野ら(1992:海底地盤内応力の測定のた めの動間隙水圧計および有効応力計の開発,テクノオーシャン'92国際シンポジウム ,pp.79-85),前野ら(1993:波浪による海底地盤の液状化と底質浮遊の現地観測, 海岸工学論文集,第40巻,pp.576-580)および前野ら(1995:砂移動と砂層内応力の 現地観測による検討,海岸工学論文集,第42巻,pp.531-535)に示されているように ,一つの波形勾配の大きい波の通過や砕波によって砂地盤が流動化し瞬時に地形変化 が生じることが確かめられている.特に暴浪時の砕波帯付近では,地盤の流動化と共 に砕波や戻り流れによる海底面付近の流れが激しいために,流動化した砂層が移動し 易い状態にある.従って,実際に一潮汐間で1m程度の地形変化が生じることは考え られなくない.なお,図−1に示す観測期間中の定時観測(一日一回測定)結果から 観測地点であるバー付近では1m以上の海底地形変化が確かめられている.また,図 −2に示されるように有効土圧変動の50分間平均値の測定結果を用いて式(1)より推 定される地盤高さは定時観測結果の地盤高さにほぼ一致していることからも有効土圧 に基づく地形変動の推定は妥当なものと考えられる.
論文番号 188 著者名 川村志麻,三浦清一,横浜勝司 論文題目 消波構造物・地盤系の破壊とその評価に関する実験的研究 討論者  カナピウソ ツルベソカタサライ(学生) 質疑  How the coefficient of friction between caisson and seabed is taken in pre ssure of water? 回答  On the estimation of failure mode of caissons (See in Fig.1〜Fig.4), the c oefficient of friction μ between caisson and seabed is calculated as follows;  μ=P/(W-U)  where P is wave force, W is weight of caisson and U is uplift force. Wa ve force and uplift force are obtained based on Goda's expression. Therefore , water pressure (uplift force) is taken into account in this study. 質疑  How the upward force U is accounted ? 回答  The upward forces U is estimated by Goda's expression for each caisson, as mentioned above. It should be pointed out that the upward force is not opera ted on our experiments. Accordingly, such upward force is not discussed conc retely in the present study.
論文番号 189 著者名 間瀬 肇,高山知司,國富將嗣,大谷 寛,久米秀俊 論文題目 親水防波堤の耐波安定性に関する実験的研究 討論者  木村克俊(北海道開発局開発土木研究所) 質疑  透過式スリットケーソンの滑動タイミングはどうなっているか? 波のフェイズと の関係は? 回答  詳しい位相は調べてないが,堤体直前の水位変動記録と堤体変位記録を見るかぎり ,波の峰の位相付近で滑動が生じ,変位は階段状になっている.
論文番号 190 著者名 早川哲也、鈴木孝信、遠藤仁彦、廣部俊夫、木村克俊、林 倫史 論文題目 親水性防波堤警報システム「クジラくん」のノズル部しぶき特性 討論者  間瀬 肇(京都大学防災研究所) 質疑  (1)Vsfと波浪条件との関連はどのように求めているのか。  (2)現地観測値と実験結果を比較する場合、どのようにするのか。すなわち現地の場 合Vsfをどのように推定したのか。  (3)発生音は人が防波堤に立ち入ることをためらうようなものであるか。 回答  (1)、(2)模型実験では、堤体前面に設置した波高計によりVsfを測定しました。しか しながら、現地での観測は不可能なので、模型実験において相関が高かった式(2) を用いて現地の波浪条件からVsfを算定しています。  (3)第42回の海岸工学講演会において、発生音の音圧や音質についての検討を行っ ていますが、利用者の心理面に及ぼす影響については今後検討を行う予定です。 討論者  藤原隆一(東洋建設) 質疑 発生させた飛沫が背後地に影響を与えませんでしょうか。 回答  背後に施設がある場合は、飛沫の飛散範囲を検討する必要があります。今回の検討 結果からしぶき高を算定することができるので、風の影響を考慮することにより飛散 範囲の推定が可能と考えられます。
論文番号 191 著者名 大野賢一・松見吉晴・木村 晃・家村健吾 論文題目 島堤被覆捨石の安定性に及ぼす波の方向分散性の影響について 討論者  河合弘泰(運輸省 港湾技術研究所) 質疑  1.多方向波の実験でSmax=5を用いているが,これは一方向波との違いを明確にす るために選んだ条件か,あるいはSmax=5程度の波浪が作用して実際に被災した事例が あることを踏まえたものか?  2.深海域でSmaxが5とか10とか小さい値であっても,防波堤が被災するような高 波浪(設計波クラスの波浪)の場合には,屈折効果によってSmaxが増加し,防波堤の 設置地点では25とか75に近い値になっている.論文集にはSmax=5の結果しか記載され ていないが,Smax=25,75程度の実験は行なっているか?もし実験をしているならば ,その結果はSmax=5とSmax=∞のどちらに近いのか? 回答  1.一方向波との差を明確にするためです.  2.Smax=75程度の実験は行っていませんが,Smax=20の実験は行ないました.その 結果はSmax=5に近いものでした. 討論者  荒木進歩(大阪大学大学院 工学研究科) 質疑  「初期被災」,「最終破壊」というのは被覆捨石がどのような移動を起こした状態 なのか.あるいは,堤体にどのような変形が生じた状態なのか.その定義を教えて下 さい.(特に「最終破壊」について) 回答  被災実験における波浪の作用方法は,1サイクルの作用時間が20分間で,堤頭部の 各部分の被災状況が定常に達するまで同一の波浪条件を20分間繰り返し作用させ,定 常状態に達した後に有義波高を増大させる方法を採用している.その時,有義波高6c mの第1回目を作用させた後に,表面の第1層目の捨石が移動および欠落した状態を 初期被災とする.また,波高を増大していった結果,第2層目の捨石が欠落して堤体 コアー部が露出した状態を最終破壊とする.  これらの定義は,Vidalら(1991)によって提案されたものを採用している. 参考文献  Vidal,C.,M.A.Losada and R.Medina(1991): Stability of mound  breakwater's head and trunk,J.Waterway,Port,Coastal and Ocean Eng.,  ASCE,Vol.117,No.6,pp.570-587.
論文番号 192 著者名 (者名)木村克俊(開発土木研究所) 論文題目 消波ブロック被覆堤の堤頭部におけるブロックの耐波安定性 討論者  荒木進歩(大阪大学大学院) 質疑 静水面での消波ブロックに働く波力を測定しているが、砕波に伴う衝撃的な波力が発 生した場合、波力計の固有振動数やデータのサンプリング間隔をどのように設定した ら良いか。 回答  本研究では小型の3分力計の先端に消波ブロックを取り付けて波力を測定しました 。測定系全体の固有振動数は水中で50〜60Hz程度でした。  今回の実験は、ご指摘のような衝撃的な砕波が生じにくい条件であるため、サンプ リング間隔はすべて100Hzとしました。衝撃性のある波力に関する検討を行う場合に は、測定系の応答性をさらに高める必要があると思います。 討論者 松見吉晴(鳥取大学) 質疑 被災実験の際に、来襲波浪の時間的な変化を考慮する必要はないか。 回答  特定の構造物の設計では、来襲波浪をモデル化して、その時間的な変化を考慮した 実験を行うことがありますが、今回は消波ブロックの基本的な安定性を把握すること を目的としたため、一定波高の不規則波群を連続して作用させています。  今後、変形量をパラメーターにした設計法を導入する方向にありますが、こうした 場合には波浪の時間的な変化も重要なファクターのひとつになると思います。
論文番号 193 著者名 五明美智男,高橋重雄,鈴木高二朗,姜閏求 論文題目 消波ブロック被覆部のブロックの安定性に関する現状調査(第2報) −消波ブロックの法尻沈下災害− 訂正  図−2中の凡例のうち,波高水深比H1/3/hの値にミスがあり,下記数値に修正.   8.八戸港  H1/3/h=0.40   2.秋田港  H1/3/h=0.58   17.相馬港 H1/3/h=0.80 討論者  北原繁志(北海道開発局開発土木研究所) 質疑  ブロックの締め固まりによって生じる空隙率の減少による沈下の影響はないのですか. 回答  足折れに関する知見や現地の状況を改めて引用しながら,沈下に対する影響につい て考えてみたいと思います. 1.足折れ実験結果からの考察  論文中でも触れているように,宮崎港断面のテトラポッドの4本の足のうち2本が全 て折れたとしても,断面外への流出を考えなければ,最大3.5m程度の天端沈下量 としかなりません.このような条件での折損は現地では考えにくいことから,まず足 折れの影響は小さいと考えるべきでしょう.次に,足折れがない場合には,上記足折 れ条件のように締め固まることは考えにくく,沈下量はもっと小さなものになると考 えられます. 2.現地状況からの考察  ブロックの締め固まりは,施工直後によく見られますが,ある程度で落ち着くもの と考えられます.一方,実際の現地では5m以上の沈下が報告され,しかも施工後か なりの時間を経過した後でも沈下が生じている事例が少なくありません.こうした状 況は,締め固まりによる沈下では説明できません.  以上より,施工直後の締め固まりはある程度避けられないものの,締め固まりによ って生じる沈下量は実際にはわずかであると考えています.また,論文中で扱った事 例については,締め固まりによる初期沈下を受けた可能性がありますが,その後の法 尻沈下や散乱によって,(締め固まりによる沈下よりも)さらに大きな変形が生じてい るものと考えています.
論文番号 196 著者名 河合弘泰,平石哲也,関本恒浩,鵜飼克臣 論文題目 許容応力度設計法と信頼性設計法による防波堤断面の比較 討論者  荒木進歩(大阪大学大学院工学研究科) 質疑  私は信頼性設計法について勉強しようと思っているのですが,分かっていないこと も多いため,基本的なことを教えて下さい.  (1)同一の安全率1.2で設計した防波堤でも被災するものとしないものがあるとのこ とですが,同一の被災確率をもつ防波堤なら,同時に被災するのでしょうか?.外力 が同じでも摩擦力(摩擦係数)は個々の防波堤では異なるので必ずしも同時には被災 しない,と考えたのですが,間違っているでしょうか.  (2)今回のご研究では供用年数を50年と仮定しておられますが,どのように決定する のが良いのでしょうか.  (3)極値波浪が年1回発生すると仮定するのは,どのような根拠に基づいているので しょうか. 回答  (1)まず,互いに遠く離れた港に全く同じ設計条件の防波堤があると仮定します.こ の場合,台風経路や発達過程によってピーク波高は異なり,潮位も違うので,一方だ けが被災することがあり得ます.次に,同じ港の隣り合ったケーソンを考えます.今 度は沖波波高も潮位も同じです.全く誤差なく設計・施工が行われたならば,ケーソ ンの耐力に差はなく,両方とも被災するかしないかのどちらかです.ところが現実に は,摩擦係数や自重に違いがあるので,一方だけが被災することがあるのです.  ここでいう被災確率とは,同一の設計条件を持つケーソン群に対して「被災函数を 設置函数と耐用年数で割った量」のことです.ある条件に対して設計した場合,ある ケーソンは強く,別のケーソンは弱くと,ばらつきます.これらをトータルとしてみ たときの平均的な被災しやすさです.  (2)ケーソン式防波堤の場合には,鉄筋コンクリートが材料として何年もつかを考え る必要があり,それは50〜100年と言われています.したがって,材料の寿命が尽き るまで防波堤を使用するならば,供用年数を50年程度にするのが妥当ではないでしょ うか.安全率を用いた現行設計法において,設計沖波には50年確率波が使われていま すが,その背景の1つが材料の寿命であると思います.  ところで,日本海側に消波工被覆堤を建設する場合には「ケーソンだけで越冬し, 春になってから消波ブロックを設置して竣工」というケースが珍しくありません.暫 定断面の被災確率については,工期に応じて供用年数を定める必要があるでしょう.  (3)年最大波を用いて沖波の発生確率分布を整理しているからです. 討論者  樋口豊久(東電設計) 質疑  (1)被災確率にはシケの継続時間も考慮されていますか.  (2)経済性評価の設計の場合,被災による程度,復旧,損害をどこまで考えています か.ケーソンの転倒まで考えると,例えばバースなど港としての機能にも影響を与え ると思います. 回答  (1)まず,被災遭遇確率の計算では,擾乱中の最高波Hmaxという1波に対して被災す るかどうかの判断をしており,Hmax以外の波の発生確率分布は考慮していません.継 続時間を直接的に与えてはいませんが,沖波においてHmaxとH1/3の比を1.8と仮定し ているので,1つの擾乱に含まれる波数によって,間接的に継続時間を与えているこ とになります.  次に,期待滑動量の計算では,継続時間を2時間と明確に定め,その時間に発生す る波がレーリー分布に従うと仮定し,個々の波に対する滑動量を足し合わせています .個々の擾乱において有義波高の変化を見たときに,ピークに近い有義波高が継続す るのが2時間程度であるという報告もあります.  (2)今回の論文では,初期建設費と防波堤復旧費のみを計上しています.被災条件は 「ケーソンは安全率が1を切った場合にマウンドから滑り落ちる」,復旧方法は一律 に「ケーソンを浮上させてマウンド上に再設置する」と仮定しています.現実には, 滑動量が数cmであれば被災と見なされません.また,数十cmないし数m滑動した場合 には,滑動量に加えて,防波堤の機能,復旧の費用や難易度などを総合的に考えて, 前面に消波工を設置したり,ケーソンを浮上再設置したりします.今回の論文ではこ のような場合分けまではしておらず,今後の課題にしたいと考えています.  次に,間接的被害についてですが,もし本気でやろうとするならば,その港湾の今 後の需要予測(どの程度の荷役が行われ,岸壁付近にどんな施設が作られ,背後地に どの程度の人が居住するか)から始めなりません.また,個々の港によって大きく異 なるものと考えられます.そのため,今回の論文では間接的被害は考慮しませんでし た.これも今後の課題としたいと考えています.
論文番号 197 著者名 平野浩一,千田昌平,和田信昭,宇多高明,見附敬三 論文題目 茅ヶ崎海岸におけるBMSの被災原因とその改良方策 討論者  芹沢真澄(海岸研究室(有)) 質疑  現在、当海岸は両端のヘッドランドと漁港で、ポケットビーチとして安定している ように思える。対象地の浜幅が足りないのなら、単純に養浜を行えば十分に思える。 ここでBMS工法を使用するのはなぜか。 回答  BMS工法を採用する以前は、約10年にわたって養浜を実施してきました。しか し養浜土砂は、海浜の両端にある波の遮蔽構造物背後に形成される静穏域へと移動し 、養浜位置にはとどまりませんでした。養浜のみによって前浜の狭い区域での堆砂を 進めるためには、極めて大量の養浜を実施しなければならず、現実的ではありません でした。  このため、前浜を少しでも拡大し侵食防止を図ることを目的としてBMS工法を採 用しました。 質疑  BMS工法の、海浜変形に対する効果は実証されているか。 回答  日本国内では初めての現地適用ですが、海外では複数の海岸において海浜部の堆砂 に効果があったことが確認されています。しかしまだまだ実証的データが不足してい ます。このためもあって、現地海岸で調査を進めています。
論文番号 199 著者名 寺島貴志,西畑昭史,本田秀樹,川合邦広,佐伯浩 論文題目 氷盤凍着時に円断面構造物に作用する鉛直方向氷荷重に関する研究 討論者  吉岡洋(京都大学 防災研究所) 質擬  ワレメの現象の予知は難しいにもかかわらず、実験結果と理論が良く合っているが 、実験条件に関して工夫した点は何か。 回答  特に工夫した点は次の4点です  1)実験サイトは潮汐の影響がない湖としました。  2)実験サイトを湖とすることにより、海氷に比べて均質な淡水氷を対象としました。  3)漁港構造物の影響がないように、模型杭は構造物から10m離して浮置しました。  4)模型杭と氷盤とが十分に凍着している夜間に実験を実施しました。 質疑 完全に条件を一定にすると(例えば氷盤が一様)、杭に非常に大きな力が作用するの で、実用上は故意に氷盤が壊れやすい部分を作ってはどうか。 回答  今回の実験における氷盤の破壊形態は、構造物と氷盤との接触面で破壊する凍着破 壊でした。したがって、鉛直方向氷荷重を軽減するためには、人工的に構造物表面と 氷盤の凍着力を小さくすれば良いことが明らかになりました。例えば、氷盤と構造物 表面の接触面積を小さくするために構造上可能な限り構造物の直径を小さくすること や、構造物表面に凍着強度の小さい塗料や合成材料を被覆するなどの低減方法が考え られます。