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論文番号 102
著者名 清水琢三・高木利光・佐藤勝弘・山田晶子
論文題目 海浜変形モデルの相互比較
討論者 池野正明(電力中央研究所)
質疑
特に図ー2のスーパータンクの地形データーのバーの形成位置に注目すると,どの
モデルも形成位置がずれており,課題は必ずしも,汀線付近の再現性だけではないの
ではないか?
→この原因は何が考えられるのか教えて下さい.
論文番号 103
著者名 粕谷晋一,藤間 穣,片野明良,川又良一,土屋義人
論文題目 異常波浪を考慮した長期汀線変化予測モデル上越地域海岸の場合-
訂正
図-5,図-6,図-7の漂砂量の単位にミスあり,m3/yrではなく104m3/yrが正しい.
討論者 佐藤慎司(建設省 土木研究所)
質疑
異常波浪期間の汀線変形の計算と実測の比較について,代表波浪の決定はどのよう
にしたのか.
回答
異常波浪が来襲した期間は,1969年12月3日〜1970年2月3日の2ヶ月間と定義しまし
た.代表波浪はW系,E系波浪ともに有義波高が2.0m以上の波を対象にしてエネルギー
平均波高と平均周期として設定しました,なお,計算はW系,E系の異常時代表波浪を
3日サイクルで繰り返し与え,2ヶ月間に観測された波浪の全エネルギーフラックスと
等価になるように代表波浪の継続時間を設定して行いました.
論文番号 104
著者名 宇多高明、小杉俊夫、平岡孝恵、加藤憲一、山形 宙
論文題目 波による粒径の淘汰作用を考慮した養浜時海浜変形モデル
討論者 佐藤愼司(建設省 土木研究所)
質疑
(1)粒径0.2mmを基準として沖への流出量を見積もっているが、汀線付近に残る
粒径は波や現海岸の条件によって変わってくるはずではないのか?
(2)現地調査では養浜地点の両側に砂が拡散しているように見受けられるが、計算で
は下流側へ一方的に堆積し、上流側は大きく侵食される結果となっている。計算モデ
ルの妥当性は検証されているのか?
回答
(1)粒径0.2mmは波による地形変化の限界水深付近における中央粒径の、全国平
均に相当しています。ここでは、沖方向への土砂流出モデルの一つの考え方を示すこ
とに重点を置いていますので、各海岸に適用する場合には、御指摘の通り海岸毎に少
しずつ特性が違うことから、汀線付近の粒径も含め現地条件の把握が重要と思います。
(2)計算結果が現地調査結果と異なるのは、入射角5°という一方的な沿岸漂砂が卓
越する計算条件で実施したからです。実際には波の入射方向がサイクリックに変化し
たことが分かっています。
討論者 三村信男(茨城大学 広域水圏環境研究センター)
質疑
養浜の効果は年オーダーで測られるべきと考えますが、論文中では、5日と10
日の計算結果で結論を導いておられます。入射波の変化など長期的な変動を含めて検
討すべきではないか?
回答
本研究は、沖方向への土砂流出モデルの考え方を示すことに重点を置いています
。したがって、時間スケールや空間スケール等の設定についてはいろいろ議論がある
と思います。しかし、まずはモデルの新しい発想を提案することに意義があると思い
ます。
討論者 山下隆男(京都大学 防災研究所)
質疑
モデルの検証を十分した後に養浜効果を検討すべきだ。沖への養浜が不経済である
と結論されているが、本当にそうであるか否かはさらに検討が必要と思いますが。
回答
沖方向への土砂流出モデルの考え方を示すことに重点を置いてます。そしてまず
は従来の考え方よりも新しいモデルが成立しうること、についてInitiativeこそが重
要と考えています。また、沖への養浜は、他の2ケースと比べて不経済と結論してい
ますが、これは急勾配海岸では当然の結果であり、直感的に見ても正しいと思います。
論文番号 107
著者名 荒木進歩・出口一郎
論文題目 捨石防波堤の断面変形に関する研究
訂正
「4.2 計算条件」のところで,水平方向波力のみを考え鉛直方向波力は与えなか
った.」とありますが,図−7〜図−10に示した計算例は「鉛直方向波力も図−6に
示すようなモデルで与えた結果です.
討論者 山下隆男(京都大学・防災研究所)
質疑
侵食・堆積型を出すことより,「h=A(d50)x(2/3)」のような平衡断面が存在するか
否かを検討されてはどうか.
回答
波高・周期が一定である規則波に対しては平衡断面が存在すると思います.しかし
現地の波は不規則であるので,ある一群の波によって形成された断面形状が別の波高
・周期を持つ波に対しても安定であるかどうかは分からず,新たに変形を起こす可能
性があります.そこで,どのような変形を起こすかを分類するために侵食・堆積型の
出現の検討を行いました.
なお,礫浜の断面形状に対しては,すでに2/3乗則の適用性が検討されています(
出口一郎・小野正順・椹木 亨(1996): 礫浜の変形に関する研究,海岸工学論文集
,第43巻,pp.506−510).
討論者 重松孝昌(大阪市立大学・工学部)
質疑
Fmax,Fminを波諸元とどのように関係づけているか? あるいはどのように関係づ
けていく予定か?
回答
今回の発表では,Fmax,Fminは波の諸元とは関係づけずに,捨石に作用する波力を
変化させたときにどのような断面形状(侵食型・堆積型)が出現するかを数値計算に
より検討しました.Fmax,Fminはモリソン式的な波力と衝撃的な波力を組み合わせる
ことにより表現できるのではないかと考えておりますので,今後,波力測定の実験結
果を基に検討していきたいと思います.
論文番号 109
著者名 鷲見浩一,小菅晋,和田明
論文題名 人工リーフ周辺の流れ・漂砂についての実験的検討
討論者 加藤一正(運輸省 港湾研)
質議
潮位変化に伴ってリーフ上の天端水深が変化すると,周辺海浜流のパターンは変化
するでしょうか?変化しないでしょうか?
回答
御指摘のように,人工リーフの天端水深は,潮位変化に伴って変化を起こします.
人工リーフ周辺での海浜流は,堤体上と開口部を透過した伝達波の波高変化が関係
していると考えられています.天端水深が変化することで,入射波の砕波点も変化し
,人工リーフ周辺域での波高の分布は,天端水深の設定によって異ると考えられます
.したがって,潮位の変化により天端水深が変化した場合,海浜流の流況パターンは
,ここで対象とした入射波と天端水深がほぼ一定の場合の海浜流と異なってくると考
えられますが,それがどの程度の相違なのかは,今後,検討をしたいと考えています.
論文番号 111
著者名 宇多高明、福田清隆、上田源一、木原均、冨士川洋一、戸川光司
論文題目 閉じた漂砂系の中での離岸堤群建設がもたらす周辺海岸の侵食とその軽減方策
討論者 加藤一正(運輸省 港湾技術研究所)
質疑
江津海岸には、江の川が流入していて、また、論文中の図面を見る限りにおいては
明確な境界もみあたらないことから、本海岸はポケットビーチではないと思います。
西向き沿岸漂砂が卓越しているのではないでしょうか?
回答
御指摘のとおり、厳密な意味ではポケットビーチとは言えません。
ただし、本論文で対象とした範囲の境界付近には、西端には岩礁(真島、島という
より小さな岬)、東端には江の川の左岸導流堤が存在し、多少の沿岸漂砂は存在する
とは考えられるものの、量的には多くなく、ポケットビーチ的な海岸と位置付けるこ
とは可能であると考えています。
「まえがき」では、上記について「両端を岬などにより区切られ、閉じた漂砂系を
有する比較的長い海岸線を持ったポケットビーチ状の海浜」と表現しています。
また、本海岸で過去に生じた海浜変形より判断すると、長期間の海浜地形変化に支
配的な卓越する一方向の波浪及びそれに伴う一方向の沿岸漂砂が存在しているとは考
えにくい状況です。
ただし、季節的に変動する波向とそれに伴う沿岸漂砂、地形変化は明らかに存在す
るものと考えられます。
論文番号 112
著者名 田中茂信・左藤慎司・小関賢次・佐々木健一・大谷靖郎・橋本新
論文題目 仙台湾南部海岸における構造物周辺の土砂移動観測
討論者 合田 良実(横浜国立大学)
質疑
(1)砂面高の観測計器・方法等についてお聞かせ下さい。
(2)シールズ数の絶対値と砂面高変化量の間には相関性があまり認められないが、シ
ールズ数は砂の移動限界には関係しても漂砂移動量の支配的な要因とはならないと考
えてよいのでしょうか。
回答
(1)砂面高の観測には、赤外光の発光部と受光部が対になった2.5?のセンサーを長
さ3mのステンレス角棒に61個(センサー部分の長さ:1.5m)埋め込んだ砂面計を
用いています。砂面計は、センサー部分の中央がほぼ海底面となるように埋設し、各
センサー毎に砂による光の遮断の有無を1時間毎に測定・記録しています。
(2)今回の観測では、漂砂量を直接測定していないため、砂面高に変化が生じた時の
底質の移動限界をシールズ数で評価しておりますが、シールズ数は、波による岸沖漂
砂の絶対量および底質の移動形態を評価するための重要な指標となるものと考えてお
ります。
討論者 不 明
質疑
(1)マクロ的な地形変化は、どの様になっていたか?
(2)St.3とSt.5の砂面高変化量が大きいが、何故St.3が侵食しているのか?(漁
港の局所的な現象か?)
回答
(1)観測期間にほぼ対応する1995年11月4日と12月8日の深浅測量結果の比較による
と、閖上漁港近傍および漁港南側の汀線付近に著しい土砂の堆積が生じ、漁港南側の
水深2m〜10mでは侵食傾向となっています。
(2)St.3とSt.5は、高波浪時にバーが発達あるいは移動する位置にあることに加え
て、沿岸漂砂の影響によって砂面変化量が大きくなっていることが考えられます。St
.3の侵食に関しては、主として岸沖漂砂に起因するものと考えられ、St.5の堆積は、当該海岸で卓越する北向きの沿岸漂砂が漁港近傍に堆積したことによって生じたものと考えられます。
論文番号 114
著者名 宇多高明、福田清隆、上田源一、木原均、戸川光司
論文題目 高津川河口部における河口処理と海岸侵食について
討論者 澤本正樹(東北大学)
質疑
河口部近傍の侵食の機構は十分説明できていると思われるが、海岸全体の侵食傾向
・土砂収支はどのように考えたらよいのか?
回答
第1に、長年実施されてきた人工的な土砂の掘削とその系外への投棄が原因と考え
られます。
第2に、定量的には明らかではありませんが、高津川から河口海浜への流出土砂の
減少が原因と考えられます。
論文番号 116
著者名 田中慎一郎、宇多高明、平光文男、木村秀治、奥村賢二、ぺい義光
論文題目 揖斐川河口部でのなぎさ再形成に伴う地形変化の再現モデル
討論者 中野 晋 (徳島大学 工学部)
質疑
養浜断面の変形モデルの外力として波浪を考えられているが、潮汐流の影響が重
要で ないのか?
回答
潮汐流は大きな規模を持って変化しています。これに対して狭い養浜区間内での
侵食 ・堆積の変化は波浪の作用を考えなければ説明できないですし、また潮汐流に
よる土砂 移動は沖合では活発ですが、汀線付近の土砂移動は波浪の作用が卓越する
ことが現地調 査でも確認されています。このことから、ここでは波浪を卓越外力と
考えています。
論文番号 117
著者名 宇多高明,木村一雄,寺田好孝,小倉和範,見附敬三
論文題目 相模川河口で観測された土砂移動サイクル
討論者 不明
質疑
砂州の後退には、自然状態での土砂サイクル以外に、導流堤や離岸堤の影響を受け
ていないか。もし受けているのであれば、それはどの程度と考えればよいか。
回答
砂州の後退は、導流堤や離岸堤の影響よりもむしろ、砂州先端部における航路維持
のための土砂浚渫によって生じていると判断しています。導流堤や離岸堤の設置は、
砂州汀線の形状に対する影響があったとしても、砂州の土砂量の減少を直接説明する
ものではないからです。砂州後退の防止策としては、中導流堤を上流方向に延伸して
ステージ?での土砂移動を断つことが必要であると言えます。
論文番号 118
著者名 宇多高明,山形宙,松田英明,赤松直博
論文題目 等深線変化モデルによる3次元河口デルタ地形の発達・変形予測
討論者 栗山善昭(運輸省 港湾技術研究所)
質疑
モデルによって河口デルタの変形特性を検討する場合には、そのモデルの現地再現
性をきちんと確認してからモデルケースの計算を行うべきだと思いますが、いかがで
すか。
回答
河口デルタの3次元的な地形変化予測が可能なモデルを開発するという意味におけ
るinitiativeを取る上では、まずアイデアを具現化することこそ重要だと考えます。
また、ここで扱う現象は、地形学的な意味でかなり時間スケールの長い現象ですから
、ノイズレベルの高い、工学的時間スケールでの観測データとの突き合わせは最初の
段階ではあまり有効な結果をもたらさないと考えます。しかし、いずれモデルの確立
を図る上では、現地データとの比較検証が重要だと考えます。
論文番号 120
著者名 和田尚大,田中仁
論文題目 河口砂州の現地調査と平衡高さ算定式の提案
討論者 栗山善昭(運輸省 港研)
質疑
図ー4を見ると10月4日から10月23日にかけて,計算された波の遡上高さが低いに
もかかわらず,現地砂州が発達しているがその原因は何が考えられるでしょうか。
回答
外力として用いた波浪データに有義波高を使っているが,実際の海岸にはそれより
大きな波がうち寄せており,これが計算値より大きな遡上の原因となったものと思わ
れます.
論文番号 121
著者名 土屋義人
論文題目 河口デルタ海岸の侵食と漂砂源管理について
討論者 入江 功(九州大学工学部)
質疑
侵食波の伝播の考え方は,今後の海岸保全,海岸管理において非常に重要と理解し
ました.このご説明に用いられた安部川から清水に至る海岸は沿岸漂砂が非常に大き
い海岸と思われますが,九州の宮崎海岸などのように,沿岸漂砂がそれほど大きくな
い海岸については,どのように考えればよいのでしょうか.また,河川排出土砂の沖
方向への流下(沿岸輸送される過程で)は海岸保全上,どの程度の意義があるでしょ
うか.
回答
わが国の砂浜海岸の形成過程を理解して,そこに存在する漂砂系の管理が海岸保全
の基本であろうと思っております.河口デルタ海岸では,当然ですが,漂砂源として
の土砂流出系(土砂生産・流出)の管理もその中に含めなければなりません.沿岸漂
砂量の多少にかかわらず,漂砂系が存在してこそ砂浜海岸が存在できるものと理解す
べきです.何らかの原因で,その漂砂系が変容または破壊されると海岸侵食が起こる
と考えています.開発に伴って漂砂系が変容されがちですが,その基本的な漂砂系の
維持管理だけはダム堆砂の排砂,養浜,サンドバイパスなどによって実施していかな
ければならないと思っております.いたずらに,海岸構造物によって海岸線を死守す
るような施策では,漂砂系の破壊を助長することになり,海岸決壊を起こしやすい海
岸となってしまうでしょう.
宮崎海岸では,沿岸漂砂量はあまり多くないようですが,そこには砂浜海岸が形成
された土砂流出系・漂砂系が存在していたはずであり,それが何らかの原因で変化し
たり変容すると,多くの場合海岸侵食が起こります.したがって,漂砂系の保全のた
めには,漂砂源である河川流域における土砂流出系と漂砂系の適切な管理が必須とな
るはずです.これら両系がすでに破壊されているのであれば,人為的にそれらを回復
させる方策を講じないと,一方的に海岸侵食を悪化させることになるのではないでし
ょうか.
討論者 磯部雅彦(東京大学工学部)
質疑
土砂管理に関する基本的な考え方を示されたことに感謝いたします.河口デルタを
含む全体の土砂管理において,河口近くの河床高の設定が重要と思っておりますが,
海岸保全の立場から適切な河床管理についてお教えください.
回答
実際面では,河口付近の河床高の設定が重要となりましょうが,わたくしは河川管
理と海岸保全とを行政的に分けてきたところにその根源があるように思います.わが
国の砂浜海岸に対する継続して実施してきた侵食対策の結果,海浜の安定化に向かっ
てきたものはほとんどなく,そのほとんどが悪化してきているのです.河川管理を目
的とした河川法と施設法に留めている海岸法にみられるように,従来種々協議されて
きたにもかかわらず,いまだに河川流域の土砂流出系と海岸における漂砂系をなぜ行
政的に一体管理しようとしないのか大変疑問に思っております.
わが国における多くの河川の河口付近における河床高はかなり低下してきているも
のが多く,漂砂源の異常な減少を起こしていると思いますが,それは流域の土砂生産
流出の管理と洪水対策の結果でしょう.しかし,もし砂浜海岸の漂砂源として土砂流
出系の存在を認識するならば,河口からの土砂流送に対応して河床高は変動するのが
自然であり,その場で洪水の疎通を図るべきであろうと思います.
論文番号 124
著者名 浅野敏之・片平真一
論文題目 深海への土砂流出を考慮した平面2次元海浜変形の数値計算
討論者 山田 晶子(五洋建設(株)技術研究所)
質疑
計算の順序について
円弧滑りによる斜面崩壊の計算 → 波・流れの計算
その通り?
波・流れの計算 → 円弧滑り ならば
通常の縦断or平面地形シミュレーションに浜崖の形成などを目的として円弧滑りを
取り込めないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
回答
円弧滑りの計算では、海底斜面に作用する波圧が考慮されています。
このような海底斜面崩壊は、頻繁に起こるものではないのでモデルに取り込む実用
的価値は無いかも知れませんが、地形変化モデルに円弧滑りを取り込むことは可能です。
論文番号 125
著者名 田中正博,阿部光信,宇多高明
論文題目 砂面計・鉄筋棒を用いた岩礁周辺での海底地形変動の現地観測
討論者 茨城大学
質疑
高波浪来襲前後で、岩礁を挟んで南側で堆積、北側では侵食というモードの地形変
動が見られたことから、この岩礁は高波浪時には岩礁の沖を一部通過しうると判断し
た根拠について教えていただきたい。
以下コメント
暴浪で沖に砂が移動する(暴浪海浜になる)が、海岸線に対して右側(南側)から
の波の入射のため、沖側でやや北側に堆積する。春から夏の南からの静穏波により、
沖の砂が岸に移動するが、波が南から入射するため北側に、つまり岩礁を回った(越
えた)形になるのではないか。
回答
当該岩礁の張出し具合から判断すると、水深-5m程度までは完全に漂砂を遮断する
岩礁岬(突堤のようなもの)と見なすことができますが、水深-5m程度以深では砂が存
在すればある程度は漂砂移動が起こっていると考えて良いと思います。今回は高波浪
時に限って水深-5〜-9mの範囲に広く堆砂域が生じたことから、結果的に当該岩礁は
高波浪時に岩礁の沖を砂の一部が通過しうると考えて良いのではないでしょうか。も
ちろん、一旦沖に砂が溜まれば通常波によっても砂移動は起こると思われます。
また高波浪時に水深-5〜-9mの範囲に広く堆砂域が生じた原因につきましては、岩
礁南側で堆積土量(沖側)が侵食土量(岸側)を大きく上回っていること(2倍以上)から
、岸沖移動に伴うバー地形形成による堆積分に加えて、北向きの沿岸漂砂が岩礁付近
で沖方向に向きを変え、そのまま沖に砂を運んだ堆積分を考慮する必要があるかと思
われます。今後は、岩礁近傍での海浜流(の向き)にも着目したいと考えております。
論文番号 129
著者名 孫 彰培,野田英明,松原雄平,黒岩正光
論文題目 高潮による海浜変形に関する研究
討論者 木村彰宏(京都大学 大学院)
質疑
式(3)を用いて汀線変化を計算していますが,式(3)の中に波浪の効果(波高
,周期の影響)は考慮できるようになっているのでしょうか.
回答
式(3)の中の侵食時間スケールTsおよび最大変化量R∞は波浪条件,底質条件
および水位上昇量によって決定されるパラメーターであるため,式(3)には波浪の
効果も考慮されています.
論文番号 130
著者名 田中 仁・山内 健二
論文題目 バリアー・アイランド上の越波によるラグーン内での土砂堆積
討論者 合田 良実(横浜国立大学)
質疑
越波量と漂砂量の関係が実験データの延長上にあるというのは大変面白いと思いま
すが,
平均時間のとり方が大きく異なるので,プロットする位置がこれでよろしいのか,
もう少しご検討する余地があるのではないでしょうか.
回答
図を描く目的として,スケールの異なる実験で濃度の値が異なるのかを検討するこ
とを考えていました.この際,実験データが図に示した形でしか与えられていないの
で,同図のような表示となりました.
討論者 手賀 夕紀子(西松建設(株)技術研究所)
質疑
(1) overwash された砂の d_50 はいくつか,というのは,Kobayashiらがやった実
験は d_50=0.38mm であり,また,Tega and Kobayashi(1997;Proc. ICCE'96) から,
Cs=0.04 の値は大体 0.38mm からあまりかけはなれた値では考えにくいため.
(2) Q は実験式を用いているが,その Q と,測定された Q と比較した場合,誤差
はどのくらいであるか.というのは,Kobayashi et-al.(1996) で,Q は経験式を導
いているが,それは測定された Q と order of magnitude の程度で合っており,そ
の Empirical Q と,Measured Qs を Plot すると (Tega & Kobayashi,1997)Cs は M
easured Qs V.S. Measured Q の Cs と比較して factor of two 程度変化する.よ
って,著者が使われた Empirical Q の値がどのくらいの誤差をもつかによって Cs
が変化すると思うがいかがでしょうか.
(3)著者らの Cs は Cs=0.04〜0.12 となったが,d_50 が 0.38mm から近い値だった
場合,0.12 は少々大きいと思うが,Kobayashi et-al,(1996)Tega and Kobayashi(19
97) の両方の場合 (Measured Qs V.S. Measured Q, and Measured Qs V.S. Empirica
l Q),それぞれの Cs は factor of two 程度の範囲内でしか変動しない.Cs=0.04〜
0.12 の変動の原因は,scale effect か?
回答
(1)約0.2-0.3mm程度であり,大きく異なるものではありません.
(2)参考文献に挙げられている冨永・佐久間(1972)の図13に見られるように,ば
らつきは見られ,ご指摘の様にこれが濃度の評価に影響していることは事実です.ま
た,本研究では法勾配1:3に対する実験式を現地海岸(前浜勾配約1:10)に外
挿して使用しているため,その意味での誤差も当然含まれています.ただ,既存の越
波量式は比較的法勾配のきついものを対称としていること,またその多くが法先水深
をパラメータとして含むため,本研究の使用には適しておらず,このために上記の冨
永らの式を用いました.今後,海岸構造物ではなくここで扱った様な海浜地形を対称
とした越波式の検討を行うことが肝要であると感じています.
(3) (2)に示した越波量の評価の影響が大きいように感じています.
論文番号 131
著者名 李在炯,武若聡,小島治幸,入江功,山口洋,高江洲義忠,島田浩
論文題目 北部九州のポケットビーチ間の沿岸漂砂の連続性について
訂正
論文内容で綴りにミスがあり,HornblendではなくHornblendeが正しい.
討論者 磯部雅彦 (東大,工)
質疑
河川と岸等の漂砂源での重鉱物組成がわかればそれと砂浜での組成の関係を教えて
下さい.
回答
砂浜での砂の鉱物の組成と周辺地域の地質とは密接な関係を持っている.西戸崎・
新宮海岸にHornblendeとAugiteとがかなり含まれているのは志賀島から西戸崎,新宮
にかけての地質にHornblende及びAugite含有Hornblende(普通輝石含有普通角閃石)
が多く含まれている志賀島花崗閃緑岩及び北崎花崗閃緑岩などの白亜紀の新期花崗岩
類が分布し、それが反映されていると思われる。恋の浦から芦屋No.1までの地域はAu
giteがかなり高い比で含まれているが、それはこの周辺地域の普通輝石角閃石安山岩
溶岩などで構成されている下関亜層群の北彦島層の影響だと思われる。芦屋No.2より
東側の海岸の底質は遠賀川周辺の花崗岩変成岩類の影響を受けていると思われる。
討論者 不明
質疑
常時波高時と高波時の卓越波向が異なっているが,底質の採取時期の違いによって
は異なる結果が生じないでしょうか.
回答
研究地域の波の観測結果によると卓越波向だけではなく逆の方向の波も高い頻度で
現れている.このように卓越波とそれと違う方向の波向を持つ波が年間を通して現れ
ているため,採取時期による結果の差異は微妙だと思われる.
論文番号 133
著者名 田中・佐藤・川岸・石川・山本・浅野
論文題目 石川海岸における漂砂機構
討論者 水流正人(五洋建設 技術研究所)
質議
図−4?と?の砂面データについて水深の深い方が侵食量が多い結果が得られてい
ますが、これは深い方が非常に細かい成分の底質が多く、浮遊しやすいからと考えて
もよろしいでしょうか。他に原因があれば教えて下さい。
回答
図―5に示されるように、本海域の底質粒径は水深10mより水深20mの方が小
さいため外力に対して移動しやすいと考えて良いと思われます。
強風時の外力と底質移動の傾向を詳細に見ますと以下のようです。
図―3から、1月2〜3日と1月21〜22日に強い風が吹き、共に高波となって
いますが、底層流には著しい差があったことが分かります。この差は風向特性の違い
に起因していると考えられます。すなわち、2日は海岸線にほぼ並行に吹いており、
北向流れが発達し易かったが、21日はすぐに海岸線に垂直から逆向きに変わり、北
向流れは発達できませんでした。
図―4から、2日の早朝(図中の矢印a)には水深10mの方が発達した底層流に
よって大きく侵食している、また、2日の深夜(図中の矢印b)には両水深共に同程
度の流速となり底質粒径の小さな水深20mの方がやや大きく侵食している、そして
、3日夜になると流向は逆転するようになるが、この逆転流の強い水深10mの方で
は速やかに埋め戻されている。なお、図中のc間は水深10mのセンサーに粒径の粗
い底質が詰まったため感度が鈍っているようです。
論文番号 135
著者名 細貝正治,澤田晴彦,若崎賞,斎藤隆,加藤一正
論文題目 海浜感潮域の地下水位と透水層設置後の影響について
討論者 内山雄介(東工大)
質疑
O.H.Pで示していた塩分調査の概要と結果.
回答
塩分濃度の測定は,透水層より背後の保安林内で,1測線当たり5本の井戸で深さ
50?間隔で行った.モニタリングは,透水層設置前後で1時間間隔,連続24〜48時間
を季節別,降雨別で実施した.結果は,多雨期が地表面付近で濃度が低下しているも
のの,深い所では降雨量との相関は得られていない.また,透水層を設置した事によ
る塩分濃度の上昇も明確なものは得られていない.今後は,平均地下水位変化のデー
タ,降雨量,波浪,河川の海水の遡上を含め,地下水塩分濃度の変動特性を明らかに
していきたいと思います.
質疑
植生に及ぼす塩分の影響に関する考察を教えていただきたい.
回答
比較的低濃度のNacl溶液の実験では,根の呼吸が低下し,リン,カリウム等の栄養
素が排出され,代謝機能が減衰するとされている.また,高濃度のNaclが含まれる海
水が林地に侵入すると,1日程度の滞留では枯死しないが,一定期間を越えると枯死
するとされている.滞海水の実験では,概ね8〜10日の滞海水日数で50%の枯死率と
なり,22日以上ではすべてが枯死したと報告されている.
論文番号 137
著者名 栗山善昭・望月徳雄
論文題目 後浜から砂丘前面にかけての地形変化と植生
討論者 加藤史訓(建設省 土研)
質疑
晴天が続くと地表付近の乾燥層が厚くなり,強風時に砂が高さ10cm程度のコウ
ボウムギを埋めてしまって,植生の持つ飛砂捕捉効果及び飛砂発生抑制効果がなくな
ってしまう恐れがありますが,そのような現象は現地で見られないのでしょうか.
回答
本研究で現地観測を行った波崎海岸では,現地観測を始めた1995年6月以降は
飛砂によって植生の大部分が埋まるようなことはありませんでした.
上記のような自然条件,すなわち,しばらく晴天が続いた後の強風は冬期に多く起
こります.しかしながら,冬期の地上には植物がほとんど生えておらず植生がない状
態ですので,高さ10cm程度の植生が飛砂によって埋没するという現象は起こりま
せん.一方,植物が地上に生えている春から秋にかけては,強風が低気圧の通過時に
降雨と共に発生することが多く,その時の飛砂量は乾燥状態の値よりも小さいので,
その結果として風が強いにもかかわらず植生が埋まらなかったのかもしれません.
論文番号 139
著者名 山下隆男・土屋義人・David R. Basco・Magnas Larson
論文題目 日・米・欧の海岸保全の相互評価(1)−侵食要因と対策−
討論者 横浜国立大学 合田良実
質疑
1990年の国際航路会議の大阪大会で各国の海岸保全のケーススタディが紹介され,
討論者が総括報告をしましたが,その中でイタリアのオスティア海岸では海岸に平行
な沖合いの潜堤(砂留め堤)を築いた上で人工養浜するケースが報告されていました
。そのように潜堤と併用した養浜の事例がどのくらいあるかお教え下さい。
回答
養浜の形態まで詳しい調査が進んでいませんが,日本のようなハードな潜堤を築造
して人工養浜するケースの事例は無かったように思います。
ただし,海岸にある城祉等を波浪災害(越波など)から護るためにハードな幅広潜堤
を築造した例はありました。また,養浜形態の一つとして,バーを人工的に作るよう
養浜するケース(feeder bar)は多く有ります。
さらに,shorefaceに養浜する場合には養浜断面先端部に小さなunderwater bermを
砂留め堤として設置する場合もありますが,波浪条件を変えるための構造物ではありません。
論文番号 140
著者名 酒井哲郎,後藤仁志,沖 和哉,中村隆志
論文題目 砂浜生物のハビタートシミュレーション
討論者 合田良実(横浜国立大学)
質疑
物理的外力として海底の上昇・低下を考慮すべきではないでしょうか.港研の加藤
室長が波崎で観測した事例では1.5m/日以上の変化が起きているとのことです.
回答
本論文で対象としたのは,有意な海底地形の変化が生じるより遙かに短い時間スケ
ールで生じる現象ですので,今回のフレームワークではご指摘の点を直接取り扱うこ
とはできません.二枚貝の潜砂能力を下回る緩やかな速度の地形変化であれば,たと
え累積として生じる海底床の上昇・低下が数mに及ぶものであっても,そのこと自体
は直接的に二枚貝の放出にはつながらないとも考えられます.一方で,海底地形の有
意な変化は当初の地形を対象として算定された底面せん断力の空間分布を大きく歪ま
せる可能性があり,この点がモデルの予測結果に与える影響なども,観測結果との対
応を見る上では重要であると考えます.ご指摘の点に関しても,今後検討致したく考
えております.
討論者 不明
質疑(コメント)
時化前後の生残率には,場所的シールズ数の分布だけではなく,貝が砂中から水中
へ出された後の海浜流等による貝の移動,集積も重要と考えられる.特に,図-5の生
残率を見ると,港周辺に形成される循環流による集積効果が重要と思われる.
回答
ご指摘のように,本研究では砂中の二枚貝が波によるせん断力で生じるシートフロ
ーにより水中に放出されるまでを取り扱ったもので,放出後の移動と集積に関しては
考慮しておりません.ある地点での生残を決定的に支配しているのは砂地盤の流動化
に伴う二枚貝の洗い出しの発生の有無でありますが,生残率(個体数の増減)の定量
的評価には,ご指摘の流れによる集積効果も重要と考えます.今後検討したく考えて
おります.
論文番号 141
著者名 山下俊彦,金子寛次,和田彰,山本明,北原繁志,谷野賢二
論文題目 砂漣形成時の地形侵食速度と潜砂性二枚貝の放出確率
討論者 清水隆夫(電力中央研究所)
質疑
1. 波による振動流の下で貝は水管を出していられるのでしょうか.
2. 水管を出せないとすると砂面の変動を感知できるのでしょうか.
回答
波による振動流の下でも貝は水管を出しています.水管を出すことにより,貝は砂
面の位置を感知し,砂面の上下に対して貝も上下しようとします.そして,砂面の侵
食に対して貝の潜砂が間に合わないとき,貝は砂中から水中に放出されます.また,
貝が潜砂あるいは這上行動を起こす潜砂深度は,貝の種類によって異なり,ウバガイ
では各々殻長の2倍以下および2倍以上,アサリでは各々殻長の2倍以下および3倍以上
です.
論文番号 142
著者名 姜閏求・高橋重雄・鈴木高二朗・三浦裕信・朴 佑善
論文題目 砂地盤の液状化消波システムの消波効果
訂正
1)表―1で,開き穴の大きさ(mm)で単位(mm)にミスがあり,(cm)が正しい.
2)707ページ右端の上から13行目0.125は,1.25が正しい.
3)図−6の横軸でS=1/20とS=1/1のSはScが正しい.
4)710ページ左端の上から7行目0.4は0.2が正しい.
討論者 山下隆男(京都大学 防災研究所)
質疑
この液状化消波システムをどうのように利用しようとしていますか?
回答
まず,液状化消波システムは構造物を必要としないため,(1)船舶の通行を容易にす
るとともに高度の静穏域を要する港湾の開口部や岸壁の前面,(2)海水交換が容易に行
える必要がある港の開口部などが考えられる.
討論者 森屋陽一(五洋建設(株) 技術研究所)
質疑
港内副振動に適用する場合には対象となる波は長周期重複波になるが,重複波や港
のスケールより長い波長の長周期波に対しての有効性はどうか?
回答
重複波に対する消波効果については検討を行わなかったが,その効果は進行波の場
合より若干落ちると思われる.また,液状化消波システムによる消波効果は消波シス
テムの長さだけではなく地盤の厚さにも大きく影響を受ける.すなわち,地盤が厚い
ほどその消波効果が良くなる.そのため,設置海域の状況にあわせて経済性のある液
状化消波システムの長さと厚さを決めれば,液状化消波システムは長周期波の制御に
も有効になると思われる.
論文番号 143
著者名 喜岡渉,柏原謙爾,Md. Akter Hossain,猪垣智靖
論文題目 流動化した底質による湾水振動の制御について
討論者 山下隆男(京都大学防災研究所)
質疑
実験での振幅はcmのオーダーだが数値計算ではmmのオーダーになっているようです
が,これで正しいですか.
回答
ご指摘のように計算波形のスケールに誤りがありました.図−5,6,7のスケー
ルは正しくは次のようです.
図ー5
図ー6
図ー7
論文番号 146
著者名 間瀬 肇,沖 和哉,榊原 弘,三島豊秋
論文題目 透過性潜堤群と表面波の Bragg 散乱に関する研究
討論者 角野昇八(大阪市立大学)
質疑
実験値の各データは波形勾配が変わっているが,計算にその影響が取り込まれてい
るか? 計算値とデータの差異は計算に波形勾配の特性が取り込まれていないことに
よるのではないか?
回答
実験では波高をほぼ一定とし周期を変えたので,波形勾配が変化している.その点
においては,計算では異なった波形勾配の波の計算をしている.質問は,波長が一定
で波高が変わる場合の波形勾配の影響,すなわち,有限振幅性の影響を指している.
この点からいえば,計算では有限振幅性は考慮していない.従って,実験結果と計算
結果を比較しての差異は,ある程度波形勾配が大きくて有限振幅性の影響が大きい場
合に現れていると思われる.その他,実験では多重反射系が形成されることも,差異
の原因となる.
論文番号 149
著者名 榊山 勉・香山真裕
論文題目 海底斜面上で砕波を伴う消波護岸への越波の数値計算
訂正
著者名に漢字の誤りがありました.「香山真祐」ではなく「香山真裕」が正しい.
図-7と図-8が逆になっている.
討論者 柘野雅樹(中央大学大学院流体研究室)
質疑
論文中で砕波を伴うケースの数値シミュレーションがなされ,得られる越波流量の
計算値は,実験値の1.1〜1.2倍になり,また計算値が実験値より大きくなる理由とし
ては,砕波によるエネルギー減衰が考慮されていないためとあります.
昨年,榊山さんが海講で発表された「消波護岸の越波に関する数値シミュレーショ
ン」の中で,本年度とほぼ同じ数値計算モデルを用いて重複波的な波動運動に近いケ
ースの検討をされていますが,そこで得られる越波流量の計算値は実験値の約2倍と
なっています.このケースは砕波によるエネルギー減衰がないときのものですが,計
算値と実験値にこれほど違いが生じるのは何故でしょうか.あるいは,本年度の改良
した計算モデルではこれほどの違いが生じないのでしょうか.お教えいただければ幸
いです.
回答
本年と昨年に遡って関連する質問をしていただきありがとうございます.
昨年度の第43回海岸工学講演会の一様水深上の消波護岸と直立護岸の2ケースにつ
いて,それぞれ波高10cm,周期1.4sの条件で計算し直してみました.第43回の時は計
算が2波程度越波したところで流出境界で計算が発散しました.越波流量は2波の値
がほぼ同程度あることを確認した上で(第43巻,p.699の図-7),平均値を計算値として
採用しました.今回,5周期分計算し直した結果では,2ケースとも所定の計算ステ
ップまで発散することなく計算できました.この点は改良されたことが反映されてい
ます.ただし,越波の回数は3波です(あまり長く計算すると越波により護岸の沖側
の水位が低下して計算に影響がでますので).
3波の平均の越波流量とこれまでの比較をまとめると以下のようになります.
実験結果 第43回 今回
直立護岸 24 42 37
消波護岸 25 52 47 単位:cm^3/s/cm
多少実験値に近づいたものの同程度の結果でした.モデルの検証という観点から越
波流量だけではなく,ケーソンに作用する圧力も測定しておくべきでした.
両者の差が2倍程度となった理由は依然としてはっきりしませんが,数値計算モデ
ルでは考慮していないことや実験での観察との違いを考えると以下の事項が挙げられ
ます.
1)ケーソン天端上での越流に対する摩擦を無視.
2)ケーソン天端上で相対的にメッシュが粗くなるために,越流に対する精度の低下.
3)実験ではケーソン天端を越流するときに天端より上の流体塊が流れ込み舌状になる
.こ のとき気泡の混入が生じる.計算では気泡の影響は考慮されない.
計算モデルだけではなく実験の精度,再現性も確認しました.越波量の測定は同一
の波浪条件に対して2回行っています.直立護岸では2回の差は約5%でした.消波護
岸は消波ブロックを網で覆った場合と網なしの比較になりますが,差は約10%でした.
依然として計算値と実験値の2倍の違いを説明できる答えを示すことは出来ません
でしたが,現時点でお答えできることは以上の通りです.
論文番号 150
著者名 渡辺 晃・藤田 龍・磯部雅彦
論文題目 越波による港内伝達波の計算法
討論者 横木裕宗(茨城大学)
質疑
平面2次元で計算しているのに,ほとんど断面2次元で計算しているのと同じ程度
にしか方向分散性が示されないのはなぜか.円筒波を仮定しているのとどこが違うのか.
回答
防波堤の越波部において矩形の初期擾乱をおこすことは,回折波の現象と同様なも
のであると考えています.すなわち,axは防波堤の幅Bであり,入射波方向の擾乱の幅ay
を波長Lに等価なものである考えると,図-7の計算に用いたパラメタ(ax=2.0m,ay=0.02
5m)ではB/L=80の回折波を検討したことになり,伝達波はほとんど方向分散性を示しま
せん.また越波部の各点では,入射波の倍周波数成分波を持つ円筒波を発生しています
が,axが大きくなればなるほど,ホイヘンスの原理によって伝達波の方向分散性は失わ
れていきます.ax/ay(=B/L)を小さくしていくと方向分散性が出てくるという定性的な
面は,本計算法でも確認することができます.
討論者 勝井秀博(大成建設(株)技術研究所)
質疑
著者がある物理的な仮定で示した値(ay=0.025m)と実験結果の逆推定から得られた
値(ay=0.2m)が10倍も異なるのはもとの仮定に問題があると思われる.著者らは水平方
向の流れのすべりに原因の一つを帰着しているが,実験上の観察などを含めた考察を
示して欲しい.
回答
本研究では越波伝達波の理論的な計算法を提案することを目的としたが,理論的に
示すのが困難な防波堤天端上での水塊の動き及びその落下形状に仮定を用いた.また
計算結果の比較に用いた実験結果が既往の1ケースであり,実験との整合性の確認はま
だまだ不十分であるといえます.今後は実験との比較検討を多く行い,本計算法の精度
及び適用性を高めていく努力をしていきたいと思います.
論文番号 151
著者名 織田幸伸,東江隆夫,灘岡和夫
論文題目 運動量を考慮した越波伝達波の算定法
討論者 横木 裕宗(茨城大学)
質疑
周期的に突入するケースでも,計算結果と実験結果の一致度は良好なのでしょうか.
回答
一致度は良好です.図−8,9が規則波が越波した時の伝達波の時系列とスペクト
ルです.実験では規則波を造波していても,越波現象が多少ランダムなため,計測結
果は規則的になっていません.計算では,実際の実験における入射波の時系列を用い
ているために,計算結果も規則的にはなっていません.両者を比較すると波高,スペ
クトルともに良好な一致を示しています.ただし,いろいろな周期成分の波が重なっ
ており,観測位置によって時系列波形が異なります.このため観測位置の若干のずれ
によって時系列としては実験と計算が一致していないように見えます.