論文番号 63

著者名 松冨英夫・今村文彦・高橋智幸・倉吉一盛・小舟浩治・G. WatsonH. Rahman・首藤伸夫

論文題目 1996年イリアンジャヤ地震津波とその被害

討論者 倉吉一盛(東北大学)

質疑

 1.流速判定に使用した建物前面,後面の津波跡は同時刻に記録されたものか?

 2.この論文中で使用している流速判定方法は,現実の流速(例,実験など)と比較した場合,どれくらいの誤差があるのか?

回答

 ご質問有り難うございます.順に回答致します.

 1.結論から申し上げますと,同時刻に記録されたものかどうか,確証はありません.ただし,一言付け加えさせていただくと,ご質問のような危惧をできるだけ避けるため,デ−タの収集場所を戻り流れ(引き波)の影響を受けにくい所,つまり平坦かつ背後が拓けた所などと限定しています.ご質問のような危惧をさらに避けるため,流速の経験式を導くに当たっては,得られたデ−タの大きい(危険)側を包絡するようにした方が良いかもしれません.

 2.本流速は,建物の前後間でのエネルギ−損失を考えずに,ベルヌ−イの定理を用いて評価されております.この点では,流速は過大評価されていると判断されますが,これ以外に,1.の質問とも関連しますが,痕跡の信頼性や痕跡の測定精度,建物に対する流れの方向,流れの非定常性などの問題もあります.よって,本流速は第1近似値と考えて下されば結構かと思います.

 著者の知る限り,陸上津波の実流速デ−タは無いと思います.よって,現実の流速との差については言及できません.実験流速との比較・検討は可能ですが,津波の再現性(模擬)などの問題があり,誤差の議論はそんなに簡単ではないと思われます.とは言え,今後は実験流速との比較・検討も行ってみたいと思っております.

 

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