論文番号 52

著者名 武田 誠・井上和也・戸田圭一・林 秀樹・上塚哲彦

論文題目 大阪湾域部の高潮氾濫解析

       − 計算モデルの検証と高潮対策の有効性 −

討論者 山下隆男(京大 防災研)

質疑

 大阪湾の高潮対策が機能しない台風条件を見出すことを試みて下さい.

回答

 本研究では,大阪の高潮対策で想定されている台風(計画台風)を用いた解析だけを行い,台風の規模の変化は考慮しませんでした.今後,御指摘の点を考慮して,どのような規模の台風が襲来した場合に,高潮対策が機能しなくなるかを検討してみようと思います.

 

討論者 柴木秀之(エコー)

質疑

 高潮による氾濫解析を行う場合,防潮堤の越流と同時に,来襲波浪による防潮堤の破壊に伴う海水の侵入も無視できない.特に,ジェーン台風当時の海岸は,第一線の防潮堤が海域に隣接しており,全面に人工的構造物はなかったと考えられるため,破堤の可能性は高い.事実,伊勢湾台風では破堤による浸水が多数報告されている.このような破堤に伴う浸水についての情報は入手されたのか?

回答

 ジェーン台風による被害報告では,たしかに破堤が生じていますが,その破堤の詳細な資料は入手できませんでした.また,基本的な資料である堤防高ですら詳細な資料が入手できていません.そこで,本研究のように堤防高を設定し,破堤は考慮できませんでした.

質疑

 破堤があるとすれば,どのように処理しているのか?

回答

 本研究の氾濫計算では,破堤ではなく防潮扉(幅員4m)の閉鎖不能を想定しています.この場合は,防潮扉が存在しないものとして解析を進めました.

質疑

 破堤による浸水の影響は,再現計算及び予測計算の結果を左右すると考えられるが,この点についてはどのような評価を考えられるか?

回答

 破堤を考慮した場合,浸水はより大きくなると考えられます.再現計算の場合,破堤箇所と破堤の過程が明らかにされているならば,それをとり入れることはできます.一方,予測計算の場合,破堤箇所などは分かりませんので,計算に破堤をとり入れることは非常に困難です.簡便な方法として,破堤箇所をいくつか想定して解析する方法が考えられます.

 

目次に戻る