論文番号 51

著者名 加藤 始・長山英樹・信岡尚道

論文題目 風波の発生・発達に及ぼす逆流と温度成層の効果についての研究

討論者 柴木秀之((株)エコー)

質疑

 1.図−9に表すような3種類の風温分布を水槽内で設定するための方法を教えていただきたい。(水温の調整及び風温の調整に要する時間等)

 2.3種類の風温分布条件下で波を発生させた場合、温度分布の状態は時々刻々変化するのではないか。?(不安定成層では変化が激しいと考えられる。)

 また、波の発達状態も変化することが考えられる。

 温度分布と波浪という2種類の過渡的な情報をどのように計測し、どのように整理して図−11のスペクトルを得たのか? (1つのスペクトルを求める時間内で温度分布はかなり変化するのではないか?)

 3.実験で作用させた風速分布は温度分布によって、どのような違いが生ずるのか?

回答

 1.論文中に書いてあるように、水槽内の水に氷または湯を入れて風洞内の気温と水温Twに温度差ΔTをつける。水槽の水はよくかき混ぜて、温度を一様にしておくが、ここまでに1〜1.5時間以上を要する。次に水面上に510分程度風を吹かせると、ΔTは少しだけ変わるが、最初のΔTに応じて図−9のような種々の温度成層をした風温分布ができる。

 2.温度分布の時間変化はあまり測定していないが、実験中、吹送距離約2.2mの点での水温は、風洞外での気温と共に度々記録しており、この気温と風洞内の境界層外での風温Taはほとんど同じであることも確認している。成層状態の指標としてはΔT=Ta-Tw を使用していが、温度分布の変化はΔTの変化の程度であることを確認している。

 波はΔt1/100秒、N=8200データでほぼ連続して4回測定し、そのアンサンブル平均値を測定値としている。これに要した時間は約6分で、その間でのΔTの変化量は、もっとも変化しやすい不安定成層で風速がUa=11.3m/sの場合でも0.5℃以下であった。図−11のスペクトル(Ua=5.6m/s)の場合は、測定中のΔTの変化は0.3℃以下であり、この程度のΔTの変化の影響はあまりないと考えられる。

 3.温度分布の違いによるによる風速分布の違い、あるいは風が水面に及ぼす効果の違いについてはその後実験を行っているが、簡単ではないので、それについては別の機会に発表したいと考えている。

 

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