論文番号 32

著者名 小林智尚・高橋智彦

論文題目 ウェーブレット変換を用いた水圧波から表面波への換算

討論者 永井紀彦(運輸省港湾技術研究所)

コメント

実務における水面波から表面波への換算に関して,参考までに下記の通りご紹介いたします.解答をお願いするものではありませんが,討議集に記録として残していただければ幸いです.

 (1)FFT法にせよ,ウェーブレット法にせよ,限界周波数 fB の設定が最大の問題点である事は討議の中で議論された通りで,全く同感です.

 (2)参考文献として引用していただいた論文では, fB は周波数スペクトルの形状を見て判断するように書きましたが,実務では間に合わなかったため,あらかじめ設定しておく必要が生じました.

 (3)ナウファスの各観測点におけるデータや,その他の浅海波浪観測データをもとに,表面波形(超音波)と水圧波形との比較を行い,妥当は fB の値について検討を行いました.

 (4)

(click to enlarge)

fB を大きく設定するほど,上図の最大換算倍率は大きくなりますので,結果として水圧波形から換算された H1/3 は大きくなります.適切な fB の値は,水深やセンサー感度,S/N比等によって変わるわけですが,現在までの我々の検討の範囲(水深850m)では,(cosh kh = 30 : kh = 2 πh/L)となるような fB を設定すると,換算 H1/3 と表面波の H1/3 は一致するという結果を得ております.

(5)こうした検討結果は,最近港湾技術研究所が開発した波浪監視計(すなわち海水浴場等で人の安全のために波浪条件をリアルタイムモニターするために開発された簡易かつ安価な波浪モニターシステム)で実用化されております.

 

討論者 関本恒浩(五洋建設())

質疑

非線形性と方向分散性を考慮した場合,水面波形から水圧変動への応答関数として応答関数のみならず位相の変化が生ずると思われる.位相変化は水面波形や波高を論ずる上で重要と考えられるが,それに対してご検討されているか.

回答

本研究では応答関数として振幅のみを考え,位相の変化は考慮にいれておりません.ご指摘いただいたとおり非線形性と方向分散性を有する波をあつかう場合に位相は重要な要素でありますが,水圧波形から表面波形への換算においてスペクトル空間でも位相変化は複雑であり,本研究で扱ったウェーブレット空間においてはまだわかっておりません.したがいまして本研究では振幅のみを対象といたしました.ウェーブレット空間上ではある瞬間ごとに任意の位相変化を導入できますので,この空間における水圧波形と表面波形の位相関係を調べ,位相変化を複素数の形で伝達関数に組み込めればと思っております.

 

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