論文番号 194

著者名 清川哲志

論文題目 浅海域における海震について

討論者 勝井秀博(大成技研)

質疑

 海底での断層の隆起(陥没)は数十秒以上かけて生じるSTEP関数的なものと理解している.図-4の解析例でのピークはa=1mT=10sで上下に振動するモデルであり,それによるp=15tf/m2という結果は現実とかけ離れた過大な見積もりとなっていないか.

回答

 討議者の質疑の要点は次の二点にあると理解します.(1)実際には海底面は振動的な動きではなく,STEP関数的に一方向に変位する.したがって,海底面の調和振動による著者のモデル化は実際的ではない.(2)15tf/m2という水圧は,(水面変動にして約15mであり,) 振幅1m,周期10秒の振動では発生しえない.

以上二点について回答いたします.まず第一点ですが,著者の解は周波数領域の解であり,海底地形変化の時刻歴に対応した動水圧の時刻歴応答を求めるには,通常の方法によります.すなわち,海底地形変化の時刻歴波形からフーリエスペクトルを求め,次に,それと周波数領域の解として得られている周波数伝達関数(本論文で示したもの)を掛けあわせ応答スペクトルを求めます.それを逆FFTにかけると,応答の時刻歴が求められます.以上により,本論文で示した結果を用いてSTEP関数的な動きを含めた任意の動きに対する応答を簡単に求めることができます.応答時刻歴は入力に依存しますが,本論文で示した周波数特性はシステム固有の特性を示しています.詳しくはフーリエ変換,システム理論等を参照して下さい.第二点ですが,ある観測点における動水圧は,波源域すべてからの寄与分の総和です.例えば波源域を100m×100mのサブ領域に分割すると,計算例の場合,200×10=2000個の要素一つ一つの同位相振動による流体運動の総和として観測されます.この結果,上記の値となることは何ら不思議ではありません.むしろ,観測点では各波源要素による流体運動に位相ずれがあるため,この程度に収まっていると考えられます.また,留意する必要があるのは,得られているのは周波数領域での結果であり,構造物が即15tf/m2の動水圧を実際に受ける訳ではないということです.第一点で述べたように,実際の動水圧の値がどうなるかは入力動にどれだけ長周期成分(計算例ではピークは約10s)が含まれているかによりますが,一般に,上記の値よりはかなり小さくなります.

 

目次に戻る