論文番号 193

著者名 米山治男、野津 厚

論文題目 海震に対する浮体構造物の動的応答特性に関する実験的研究

討論者 森田知志((株)熊谷組)

質疑

 1.水深条件の設定方法に関してh=180cmを境に全く状況の異なる条件となっているのでは?

 2.図−4においてf=35Hzの加速度比も1.0となるべきではないか?アンカーの固定方法の問題では?

 3.水の圧縮性を再現した実験方法案は?

回答

 1.確かに水深180cmを境に実験の境界条件が異なっているが、本研究においては実験室レベルででき得る限りの深い水深を実現して、水面と海底面間の圧縮波の共振という海震現象を再現することを目標としていたために、このような境界条件で実験を実施せざるを得なかった。

 2.著者らが観測した限り、実験中に振動台が振動することによりアンカーが動いた形跡はない。アンカーは完全に固定されていたと考えられる。論文中では、加速度比が1.0になっていないのは浮体のアクリル製底板の強度不足によるものであると説明しているが、実際に底板の歪みを歪みゲージにより計測しており、f=35Hzのときは他の加振周波数のときと異なり大きな歪みが発生していた。すなわち、底板の振動により加速度比が大きくなったものと考えられる。

 3.本研究では、大きな振動台を用いて海震の再現実験を実施したが、上部に水槽を有したもっと小型の振動台で高振動数加振が行える装置を使用する、あるいは、長いパイプの中に水を入れて封印し、横置きして振動台に取り付け、水平加振することによりパイプの中に疎密波を発生させる、といった方法が考えられる。ただし、後者の方法では、浮体に対する実験が行えないことが欠点である。

 

討論者 織田幸伸(大成建設(株)技術研究所)

質疑

 1.水深が小さい場合に実験と計算が合っているのは、計算が2次元を仮定しているために、実験において側壁を有する水深での結果と合致したものと考えられる。3次元的に広がっている実験結果を2次元計算で再現しようとするのは無理があるのでは?

 2.計算において、共振している周波数のピークの値は、本来+無限大になっているはずである。この周波数の近辺で浮体の運動を計算するならば、何らかの抵抗を入れる必要があるが、どのような抵抗を入れれば良いのか?

回答

 1.論文中にも述べているとおり、ここでは簡易的に海震をシミュレイトすることを目的としている。したがって、現実的には3次元計算で行うべきところを簡易的に2次元計算で行っているのである。なお、「有限要素法によるシミュレーションは2次元計算であるため、実験の3次元性を再現できていない」とのコメントを論文中に示している。

 2.本研究では浮体の運動方程式を解いて浮体の運動を計算しているわけではなく、計算された浮体底面位置での動水圧から近似的に浮体の応答加速度を求めている。したがって、浮体の造波減衰等の抵抗を導入することはできない。ピークの値が無限大になっていないのは、有限要素法のメッシュの分割方法等の他の原因によるものと考えられる。ただし、ここでは共振が発生するときの振動数を知るために計算を行っているので、ピークの値自体は重要ではない。

 

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