序文 (灘岡和夫,平成22年10月)
前回の海岸工学論文集の序文で最近の申込件数の減少について触れたが,今回の海岸工学論文集でその減少傾向がいよいよ明確になってきた感がある.今回の申込件数は昨年の381編からさらに減り354編であった.これはピークだった第49巻の462編から見ると2割以上の減少である.特にここ数年の「沿岸域の環境と生態系」分野での申込件数の減少が目立っている.
環境保全分野は,防災分野と並んでより多面的・包括的なアプローチが必要とされる分野であることから,そのためのプラットフォーム機能の一端を果たしていけるかどうかは海岸工学論文集・講演会の今後の発展を左右する一つの重要なポイントになる.そのためには,海岸工学以外の分野の方達から見ても,海岸工学論文集・講演会が十分魅力的でなくてはいけない.そして,海岸工学自体がチャレンジングで魅力的な内容を多面的に展開している必要がある.
そもそも,われわれは,最近の様々な時代要請に十分応えられているだろうか,さらに進んで新たな方向性を多方面で展開していくための戦略とそれを支える様々なネットワークを構築してきているだろうか,今後の展開をリードして行くための人材の育成は十分か,そのような大きな問いにも具体的に向き合っていく必要がある.
このような問題意識のもとに,今後の発展戦略に関わる重点課題として,以下の4課題を提起させて頂きたい.
これらを具体的に検討していくための海岸工学委員会内の体制として,後藤幹事長に音頭をとって頂き,委員長直属の組織として「企画構想WG」を設置して頂いた.さっそく,講演会改革を中心とした検討を精力的に進めて頂いている.また,今回から「国際セッション」が設定された.これで,わが国への海岸工学分野での留学生等にとって,講演会での英語での発表だけでなく英語での論文投稿の場が実現することとなった.これも講演会改革の一環であるが,上記2)の国際展開にも寄与し得る新たな試みでもある.
今後,海岸工学の新たな発展とそれに基づく海岸工学・講演会の活性化を図るべく,上記4課題への取り組みがより本格化していくことが望まれる.